遊撃→三塁→二塁 日替わりポジションを「楽しみ」と受け止めるロッテ鳥谷に共感

報道陣への丁寧な対応に「人が変わったみたい」との声も

 一方で、積み重ねてきた努力と経験はウソをつかない。“実戦デビュー”となった17日の巨人との2軍戦では、若林が放った三遊間への痛烈なゴロを好捕し、よどみないフットワークで刺した。「打者が1軍でやっていた選手だったので、打球方向(の傾向)に合わせて1歩2歩(三塁方向へ)寄っていた。今までやってきた経験が生きたプレー」と自画自賛。こう言ってはなんだが、昨季出場77試合、阪神戦は9試合、33打席に過ぎなかった若林のデータが頭に入っていることに驚かされた。

 春季キャンプが終了し、オープン戦期間も中盤に入ってからの入団。なかなか所属先が決まらず、「公式戦が開幕しても決まらなければ引退」と決意した中での調整、トレーニングはモチベーションの維持がさぞかし難しかっただろうが、体の切れは申し分ない。

 井口監督が「おそらく現役選手で1番」と評する練習量は相変わらずで、試合出場後も室内練習場にこもる姿がある。今岡2軍監督は「若い選手たちが彼の行動を見ている。もう既に“化学反応”は起きていますよ」と目を細める。2軍戦中も、ピンチと見ればタイムを取ってマウンドに駆け寄り、ベンチに退いた後も、イニング間にファウルゾーンに出て外野手とのキャッチボールの相手を買って出ており、チームに溶け込んでいる。

 報道陣の質問にはじっくり、丁寧に答えている。「う~ん、どう言ったらいいのかな……」と一生懸命答えを探すこともある。阪神時代を知る記者には「クールで、報道陣にはだいたい素っ気なかったのに、人が変わったみたい」と驚いている人もいる。もともと東京出身で、埼玉・聖望学園高、早大と関東で過ごした。リーグも変わり、久しぶりに生活拠点を戻す形になって、いろいろな意味で心境の変化があるのかもしれない。

 公式戦開幕は現在設定されている4月24日に迎えられるかどうか、予断を許さない状況だが、このまま順調にいけば鳥谷は間違いなくその場にいるはず。何より「阪神も良かったけれど、ロッテに移籍して“新しい自分”に出会えて本当に良かった」と感じられるシーズンにしてほしい。

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