少年の死を無駄にしない… BCリーグが続ける「MIKITO AED PROJECT」とは?
少年野球にも広がる「AED」の設置
サッカークラブなどでは、AEDが設置されているところが増えている。JFA(日本サッカー協会)では、2017年から『スポーツ救命ライセンス講習会(BLSプロジェクト)』をスタートさせ、指導者にAEDの使用法の習得を広く呼び掛けている。
しかし、中学校以下の少年野球では、まだまだAEDの普及は遅れている。また野球指導者で、心臓マッサージについての知識がある人はまだ少ない。そういう状態では、事故が起こっても、救急車を呼ぶだけで、なすすべもなく子供が亡くなっていくのを見ているしかなかいのだ。
神奈川県下のある少年軟式野球チームは、入団者不足に悩んでいた。ある年、選手の父親が監督になったが、話を聞いてみると近隣での評判が非常に悪いことに気が付いた。それまでの指導者は給水時間を適切にとらなかったり、猛暑でも練習を続けさせたり、昔ながらの指導方法だった。また罵声を浴びせることもあった。このために「あのチームはブラックだ」といううわさが周囲に広がっていたのだ。
特に母親たちの拒否感が強かった。そこで新監督は、チームに諮って「AEDのレンタル」を決めた。月額数千円だが、監督、コーチで費用負担をすることにした。さらに、専門家による「AED講習会」を行った。講習会には選手の父母だけでなく、周辺地域の家庭にも呼び掛けて参加してもらった。これをきっかけにチームの評判は良くなり、入団者が少しずつ増えていった。このチームは今、体験会の際に「AED講習会」も行うようにしているという。
昨年から始まった「ぐんま野球フェスタ」の会場でも「AED講習会」が行われている。全国的な普及にはまだほど遠いが、少年野球の現場にも少しずつAEDが配備されようとしている。
わが子を少年野球チームに入れようとするお父さん、お母さんはチームに「AEDの用意はありますか?」と聞いてみるとよいかもしれない。それで、そのチームが「健康面に配慮しているかどうか」の一端が分かるからだ。
(広尾晃 / Koh Hiroo)