いまだ新型コロナ感染者ゼロ　岩手・盛岡大付、震災の経験から「必ず乗り越えられる」

出身地によるいじめ防止、逆に注意喚起のきっかけになれば

　現在は部員を3グループに分け、時間をずらして練習を行う。「いつまで感染ゼロが続くか。県内でもいずれ出るのでは」という思いもあるという。さらに最も心を砕くのが、非常時下での生徒の心の指導だ。

「一般生のほとんどは岩手の子。全国から集まっている野球部が、こういう状況のなかでいじめの対象になってしまわないか、そこにも気を配りつつガイドラインに沿って指導しています。また逆に、一度地元に戻った子たちが各地のリアルな現状を見てきて、危機感の薄い岩手の子にいい意味で注意喚起を促すケースもある。こういう状況だからこそ、差別やいじめではなくお互いに協力し合うきっかけになってくれれば」

　前例のない状況だが、思い起こされるのはやはり震災当時の経験だ。

「震災のときは今の子らは小学校低学年くらいでしょうか。あの時は寮が停電して、寒くてバスの中で暖房をつけて眠った。食料もなくてね。あのときと比べたらと思う反面、今回はいつまで長引くのか先の見えない怖さがある。一概に比べることはできないですが、必ず乗り越えられると思います」

（佐藤佑輔 / Yusuke Sato）