「一言で言えば甘い」 高知新監督に就任した元鷹左腕が語る独立リーグ
元ダイエー、阪神の吉田豊彦氏にインタビュー
四国アイランドリーグplusの高知ファイティングドッグスは、今季から前年まで投手コーチを務めていた吉田豊彦氏が監督に就任した。コーチ時代を含めて今季で在籍9年目となる吉田新監督に独立リーグの現状について聞いた。
――吉田監督は1987年ドラフト1位で南海に入団し、阪神、近鉄、楽天でプレーされました。
「20年間現役を務めました。弱いチームが多かったですが、それだけにチャンスをもらったように思います。投手として大事にしていたのはコントロールです」
――阪神時代には野村克也監督の教えを受けました。
「野村監督には『相手が嫌がるインサイドを攻めなさい』とすごく言われました。インサイドに突っ込めない投手は大成しないと。配球なども自分で考えましたが、投手としての自分は野村監督が期待するレベルには達していなかったのではないでしょうか」
――2007年に引退し、翌年、楽天の投手コーチになりました。ここでまた野村監督の下で働くことになりました。
「コーチとしては特に指導を受けていませんが、現役時代に教えていただいたことをもとに指導しました。私は2軍を担当しましたが、その中から辛島航や戸村健次などが育ちました」
――2011年限りで楽天を退団して高知にコーチとして入団しました。
「南海の先輩である当時の定岡智秋監督に呼ばれたんです。独立リーグは、NPBとは大きく環境が違うので、こんな環境で野球をするんだ、と驚きました。高知はプロ野球時代も春季キャンプでよく来ていましたが、高知ファイティングドッグスの練習場のある越知町は初めてでしたから、田舎だなと思いました」
――選手の実力的にはどのように見ていましたか?
「楽天のコーチ時代、私は高知からロッテに入団した角中勝也をよく見ていました。彼はまだ大きな背番号を背負っていましたが、とにかくフルスイングが目立った。近いポイントで思い切り振っていた。角中を見ていたので、独立リーグにもそこそこのレベルの選手がいることは分かっていました。ただ、いざ現地で指導をしてみると、プロに行くには適齢期を過ぎている選手が多かった。もう出来上がってしまっていてそこを何とか変えていこうと思いましたが、なかなかうまくいかなかった。出来上がった選手をまた解いて、締め直さないといけない。時間がかかるし、うまくいかないことも多かったですね」
――若い選手はどうだったのですか。
「いいものは持っていても、考え方や行動力がレベルに達していない選手が多くて。こんこんと話をさせてもらいました。自分がどうなりたいのか、を持っていない選手が多くて。一言で言えば甘いんですね。そういう選手には、毎日一緒に練習しようと呼びかけました。最近、やっと理解してくれて、いい感じになってきている選手も出てきました。ここにいる選手は、ある程度の力は持っているけど、何かが足りない。ここを良くしたらもっと良くなるのにな、という選手です。ちょっと進歩すればガラッと変わるのにと思います。それを気付かせてあげるのが我々の役割だと思います」
――今年から監督に就任されました。どんな目標を立てられましたか。
「チームは10年間優勝していません。何としても優勝を、と思います。そのためにはウィークポイントの底上げをしなくては。投手全般は私が見ますが、野手は定岡ヘッドコーチと勝呂コーチにお任せします。それから、NPBに選手を輩出したい。素材のいい選手を、3年くらいじっくり育成してプロ野球に送り込むことができればいいなと思っています」
NPB同様、四国アイランドリーグplusも新型コロナウイルスの感染拡大で開幕日が決まっていない。リーグは5月上旬までに再度方針を発表するとしているが、我慢の日々が続く。吉田豊彦監督は、高知にきて9年目。NPB出身の指導者としては、現任では最も在籍期間が長い。独立リーグの存在意義を十分に理解する吉田監督のもとから、新しい選手が羽ばたくことを期待したい。
(広尾晃 / Koh Hiroo)