南米で働く1人の日本人トレーナー 異国で国歌独唱まで任されるワケとは…
日本人トレーナー本間敬人氏はベネズエラのオールスター戦でも2度国歌斉唱している
南米の野球大国ベネズエラでプロ野球のトレーナーとして勤務しながら、毎年のように試合で国歌独唱を務めている異色の日本人がいる。現在、ドミニカ共和国にあるフィリーズ傘下のアカデミーで働いている本間敬人氏だ。米国で4回、そしてベネズエラのウインターリーグで8回。ベネズエラではオールスターでも2度、国歌を歌った。本間氏はなぜ歌い続けるのか、その訳を聞いた。
日本の高校を卒業後、米国の大学を経て、07年から米国大陸の野球界で働いている本間氏。トレーナーの本業だけでなく、毎年のように試合前に国歌独唱を務めている変わった経歴の持ち主だ。初めて歌ったのは大リーグ・フィリーズ傘下のハイAで勤務していた07年だった。
「『おまえ、米国に7年も住んでるのに国歌を知らないのはまずくないか?』って話になって、確かにそうだと思い、覚えたんです。そしたら『じゃあ歌っちゃえば?』ってなりまして……。米国では毎試合、試合前に国歌が流れるんですが、マイナーでは通常、テープが流れるだけ。自分は別に歌が上手い訳でもないんですけど、『それなら俺、歌います』と、勢いで歌っちゃいました」
米国ではその後も3度、国歌独唱を務めた。それはウインターリーグで働いていたベネズエラでも続いた。
「ベネズエラでも毎試合国歌斉唱があったので、歌詞を覚えたんです。そしたら、選手たちから『歌えよ』と言われ、その話がGMにも伝わって、1か月後に歌うことになった。外国人で珍しいからでしょうね。歌ったら『ベネズエラ人でも歌詞間違えるのに、よく歌い切ったな』と褒めてもらえました」
ベネズエラでは07年から働いていた本間氏が同国で初めて国歌を歌ったのは、ナベガンテス・デル・マガジャネスに所属していた10年。その試合でチームが勝利し「おまえが歌うと勝つから、ゲン担ぎで大事な試合でまた歌ってもらおう」となり、プレーオフでも歌うと、またもチームは勝利。本間氏は「勝ったのはただの偶然」と話すが、その後も負けられない大事な試合で大役が回ってくるようになった。チームは12、13年に2年続けてリーグ優勝。中南米No.1の座を争うカリビアンシリーズにも出場した。
オールスターでも歌った。11年はオールスター前日に行われたホームラン競争前に国歌を独唱。13年にはオールスター本番でも国歌を独唱し、全国に生中継された。