先発は救援よりどれくらい難しい? データで見える「1.25」という数字の差
先発と救援の成績を単純に比較すると防御率で0.30ほどの差
はじめに先発と救援で成績がどの程度違うのか、NPB全体の平均を比較してみたい。イラストは1970年から2019年までの50年を5年ごとに区切り、先発(赤)と救援(青)の成績推移を見たものだ。実線は防御率、破線は守備から独立した奪三振・与四死球・被本塁打の3要素から投手の貢献を測るFIPを示している。ここでは防御率、FIPともに比較を行いやすいよう、NPBの平均を4.00とした場合の値で表した。
防御率、FIPともに、1970年代から年を経るごとに折れ線が上下に分かれ、先発と救援の差が広がっていっているのがわかる(注2)。近年は特に救援成績が良化傾向にあるようだ。要因としては、投手分業制によって救援が重要視されるようになり、旧来の「救援=先発できない投手」扱いだった時代で先発していたような投手でも、救援にまわるケースが増えたことが大きいと考えられる。
2015-19年の直近5年で見ると、平均を4.00とした場合の防御率は先発が4.10、救援が3.81。救援防御率+0.30点くらいが先発防御率となっているようだ。ただ、この数字がそのまま難易度の差と言えるかは疑問である。先発投手は防御率3点台を割れば好投手として持て囃される一方で、防御率1点台の救援はさほど珍しくない。先発と救援の難易度の差は実際にはこれ以上に大きいと思われる。優秀な投手は全体的に先発起用される傾向が強いため、それが難易度と相殺して約0.30という小さな差になっている可能性が高い。
これらを踏まえると、先発と救援とでは、どのようなレベルの投手を起用するかという点で強烈なバイアスが働いており、両者の平均成績を見比べるだけではどの程度、先発が難しいのかは判別できない。現代は分業化によってほぼ先発しかしない、救援しかしない投手も多く、表面上の数字から実態を探るには限界がある。