元鷹ズレータ氏、マウンドで泣き崩れた斉藤和巳氏への思い 「リスペクトの気持ちを生んだ」
最高の投手であり、良き友人。斉藤和巳への思い
――2006年のCS第2ステージでの斉藤和巳投手(元ダイエー)がサヨナラヒットを打たれた場面。敗北が決まった瞬間の気持ちと斉藤投手の肩を抱いて歩いてダッグアウトに戻った時の気持ちは。
「とても感傷的な瞬間でした。斉藤和巳は常に100%で試合に臨む選手でした。そして、常にベスト以上のパフォーマンスを、チーム、さらには日本のプロ野球ファンのためにする選手でした。彼は私にとって素晴らしい友人でした。
あの瞬間、私が見たあの光景にはとても失望しましたし、私のチームメートにあのようなことが起きるということは想定していませんでした。私が失望した理由は……チームというのは勝利そして敗北を全員で分かち合うのです。あの日、あの瞬間は……私たちはチームとして敗北したのです。
私が理解できなかったことは、なぜ他のチームメートはあの瞬間に和巳を置いて、皆グラウンドを去ったのかということです。私と(ホルベルト・)カブレラ選手はあのとき、和巳にとって一番支えが必要であったであろう瞬間にマウンドへ行き、私のチームの最高の投手をダッグアウトへ連れていきました。しかし、私が(野球から)学んだことは、勝とうが負けようが、どんなことがあろうとも、常にチーム、そして選手を想うことです。
私にとって、他のチームメートがグラウンドから去り、和巳、カブレラ、そして私だけがマウンドにいた光景はとても複雑でした。チームのエースであり、最高の投手であり、良き友人でもある、和巳を観衆の眼前にさらされ続けるマウンド上で放っておくことは私にはできなかったのです。あのとき、私はすべてのことを忘れ、良き友人であり、チームメートである和巳を気遣うことに集中していました。彼そして我々はベストを尽くしましたが、サヨナラヒットを打たれてしまいました。しかし、『勝利』そして『敗北』は野球の一部なのです。負けたときはチーム全体一体となってその事実を受け止めるのです。ですので、あの瞬間なぜ他のチームメートが和巳をマウンド上に置いてグランドを去ったのか、そのとき理解できなかったのです。
現実的に、野球というのはいつも勝利するとは限らないのです。勝つときもあれば負けるときもあります。あの日は負けましたが、トライはしました。私たちは良いチームでしたが、他の良いチームに負けたのです。和巳は相手チームに慄いていたわけでなく、ベストを尽くさなかったわけでもないのです。いいえ、彼はベストを尽くしたのです。だからこそ、私たちは斉藤投手をあのような場に置いておくわけにはならなかったのです。
なぜ、私がこれほどまで彼を尊敬していたのかというと、和巳は私が見た野球選手の誰よりも準備に力を注ぐ選手だったからです。私は6年間日本でプレーをしましたが、彼ほど一生懸命にプレーをする選手を見たことがありません。彼は不満を一切言わず、常に彼が追い求めるものを得ることに集中していました。その姿勢が私の彼へのリスペクトの気持ちを生んだのです。
2018年にレジェンドデーで和巳と再会しましたが、私たちはそのシーンについては話しませんでした。私たちは双方の近況や、家族について、友達など、『幸せな気持ち』について話をしましたよ」
○フリオ・ズレータさんからのメッセージ
「こんばんは~ズレータ選手です。私は元気です。日本の野球ファンは元気ですか? 私も本当にうれしいです。本当にありがとう。今年はCOVID-19もう少しね。でも、みんないっしょにがんばるよ。もうちょっと少しだけ。
また、10月頃にはみなさん野球があります。がんばってよ。あきらめないでください。
(ここまで日本語)
このような機会をいただき本当にありがとうございます。とても楽しかったですし、素晴らしい思い出を思い出すことができました。日本の野球ファンが今も私に興味を持ってくださりとてもうれしいです。
日本、日本の野球ファン、友人たちは私の人生にとって大きな存在です。皆、私に良くしてくれましたし、私を受け入れてくれたことに感謝しています。すべての人がこのような素晴らしい機会に恵まれるとは限らないですしね。ありがとうございます。
私は日本の野球ファンといつまでも繋がっていたいですし、今回のような機会が最後でないことを祈ります。なぜなら、私は一生忘れない、たくさんの良き日本での思い出があるからです」
(インタビュー:高木隆)