なぜドラ1候補がYouTubeで発信するのか? 伊藤大海が動画を残す意味と子供たちへの思い

『そういうことやってるから、ウチに来て欲しい』と言われるような選手に…

 自分より年下の世代の選手たちに、少しでも飛躍につながるきっかけを与えたいという思いが、このような熱心な姿勢につながっている。伊藤は駒大苫小牧高時代、2年春の甲子園に出場。その後、東都リーグの駒大に進学も、1年時に環境の変化を求め、退部。リーグの規定で一年間、公式戦の出場はできなかった。その間、トレーニング方法を見直し、140キロ前後だった球速が10キロ近くアップし、2年連続で大学ジャパンに選ばれるような存在となった。今では最速155キロの直球と、多彩な変化球を武器とする。

「自分の中でプラスになっているところもあります。質問で自分が忘れかけていたようなことが来たとき、もう一回、改めようという気持ちになります。伝えることを念頭に置くと、わかりやすく、自分に新しく入ってくるみたいな感じもして、引き出しが増えるというような感じになってます」

 1年間の“浪人”期間で学んだことはたくさんある。一番伝えたいのは貫くことだ。自分の他にもこのようにインターネットで野球技術、経験を発信する人が増えてほしい思いも持っている。

「自分自身が人と違った道を歩いているというのもあるんですが、ツイッターとかYouTubeとかを活用して発信していければ、自分のことを貫くという思いを持ってくれる子も出てくると思いますし、子供たちも、(貫くという)そういう思いを持ってやってもらえればと思います」

 動画の構成、アップロード作業は、自分一人でやっている。最初は周囲の視線も気になったが今はない。苫小牧駒大が所属する北海道六大学も春のリーグ戦は中止になってしまった。プレー動画以外にも、こういう試みで多くの人の目に届けようとする姿は応援していきたいところだ。

「アマチュア選手がするって、あまりないですし、スカウトの方が僕の動画をどんな目で見られるんだろう……と、いうような思いもあったんですけど、それ以上に『そういうのやっているから獲らない』とか思われるのではなく、反対に『そういうことやってるから、ウチに来て欲しい』と思われるような選手になりたいです」

 野球観をオープンにすることで、自分自身に刺激を与え、間違ったことを伝えてはいけないという責任感も生まれている。伊藤は新たな世代の野球伝道師として、自覚を持って、野球と向き合っていく。

◇伊藤大海(いとう・ひろみ)1997年8月31日生まれ、北海道鹿部町出身。176センチ、82キロ。右投左打。鹿部小で「鹿部クラップーズ」で野球を始め、駒大苫小牧では1年秋に初ベンチ入りし14年の選抜、創成館戦(長崎)で3安打完封勝利。駒大進学も1年秋に退学し、17年春に苫小牧駒大入学。2年春に公式戦デビューし、無傷の6勝でリーグ優勝し全日本大学選手権出場。2、3年時に侍ジャパン大学代表。ツイッターのアカウントは(@hiromi151)。

【動画】後ろには野球本がズラリ…なぜプロ注目の大学生、苫小牧駒大・伊藤大海が動画をアップするのか

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