父は通算474本塁打 フジ田淵裕章アナが野球を諦めた森本稀哲の衝撃
帝京時代の森本稀哲氏から受けた衝撃「全てが全くの別物でした」
この試合で田淵アナは、これまでに味わったことのない衝撃を受けたという。「森本さんを見て野球って奥深いな、と思いました。レベルが違いましたね。やっている競技が違うというか、スピード、強さ、全てが全くの別物でした」。
田淵アナは中前へ抜けようかという痛烈な打球を放った。「センターに確実に抜けたと思ったんです」。だが、当時、遊撃手だった森本氏がこの打球に平然と追いつき、一塁へと送球してきた。結果的には内野安打となったものの、自身のイメージを遥かに上回る森本氏のプレーを目の当たりにして決断した。「大学に行って野球をするのをやめよう、選手としては無理だ、と」。
高校3年間を区切りに選手としての道を諦めた田淵アナ。それでも“野球愛”は身体の中から消えなかった。「将来、野球に携わりたいという思いはありました。アナウンサーとは思っていなかったのですが、野球に携われる仕事をしたいな、と思っていましたね」。幸運にもフジテレビのアナウンサーとして、その思いを叶えることができた。
野球の世界も奥深いが、それを伝える実況の世界も奥深い。田淵アナは実況の難しさとして「まず台本がありません。シナリオは一切なく、3時間、3時間半、フリートークです。10人の実況がいたら10通りの実況があるんです」。野球は筋書きのないドラマだ。同じ試合は1試合もなく、その試合、状況に応じて解説者と話をしなければならない。
「解説者をナビゲートして、より面白く、分かりやすく伝えるのが私たちの仕事です。いかに『今が肝ですよ』と視聴者に気づかせることができるか」と田淵アナは実況としての役割を語る。そして「投げました、打ちました、抑えましただけを伝えるのが実況ではありません。大切なことは、どこに目を付け、話題を作り、いかに視聴者が試合をより楽しめるかをシーンごとに考えることです」と、実況のポイントを語る。