父とスカウトは元バッテリー、甲子園は最後のアピールの場…健大高崎・下の葛藤
甲子園は最後のアピールの場、“意地悪な質問”にドラフト候補が出した率直な答え
「プロは小さいころからの夢。秋の結果から進路をプロ一本に絞ったんですが、最近は不安な思いも大きい。みんな大学進学が決まるなか、自分だけが10月(のドラフト)までソワソワしてるような感じで……。自分が選んだ道が間違ってないと思いたくても、それを証明する機会がない。それでも、誘いをいただいた大学さんを断ったからには最後までアピールを続けたい」
他のナインの進路が決まるなか、下にとっては群馬大会、甲子園での招待試合は紛れもないアピールの場。最後の夏、3年生全員で臨むというチームの方針も理解しつつ、将来のためには数少ない実戦の場で自らの能力を最大限に誇示しなくてはならない。“意地悪な質問”と前置きしつつ「甲子園では完投したいか」と率直な疑問をぶつけると、実に誠実な答えが返ってきた。
「自分にとっては、本当に残り少ないアピールの場。単純に投手として、1つしかないマウンドを誰にも譲りたくないという気持ちもあります。でも、試合が始まったら進路が決まってるかどうかは関係ない。全員が出て勝てればそれが一番だし、自分が投げて勝てるのならそれでもいい。それを決めるのは監督さんで、そこにどっちが上とか下とかはありません。将来がかかっていることは頭の片隅に置きつつも、たぶん試合になったらそんなのは全部吹っ飛んじゃいます」
自らが選んだ進路と、父への感謝、そして信頼する仲間への思い。様々な葛藤を抱え、一人のドラフト候補の最後の夏が始まる。
(佐藤佑輔 / Yusuke Sato)