なぜ球団名に“ソックス”がつくのか? 野球と靴下にまつわる伝統と歴史
ストッキングを見せる「クラシックスタイル」を再流行させたのはイチロー氏
野球の靴下は、当初は半ズボンの下に靴下を履くだけだったが、その後、白い靴下(アンダーストッキング)の上に色付きで、足の部分をくりぬいた「カットストッキング(スターラップス)」を重ね履きするようになる。染色技術が低い時代、ストッキングの染料が皮膚を汚すことがあったからだと言われている。
ストッキングは半ズボンから出して着用するのがスタンダードだったが、1990年代になるとMLB選手の中に、くるぶしのあたりまである長いズボンを穿いて、ストッキングを見せない着こなしが大流行する。これは日本にも伝わり、NPBでも多くの選手がストッキングを見せない着こなしをするようになった。これにともなってアンダーストッキングだけを着用して「カットストッキング(スターラップス)」を使わない選手も増えていた。
ちなみにアメリカでは、ストッキングを見せないユニフォームの着用は、MLBだけで認められていて、マイナーリーグでは認められていない。また、日本の高校野球でも「高校野球用具の使用制限」という通達の中で「ストッキングは見せることとする」と明記されており、プロ野球のような着こなしは認められていない。
21世紀に入っても、多くの日米のプロ野球選手はストッキングを隠してユニホームを着ていたが、MLBでは近年、ストッキングをはっきりと見せる「クラシックスタイル」の着こなしをする選手が増えてきた。そのきっかけはイチロー氏だったという。ストッキングを長く見せて塁を縦横に駆け巡るイチローの姿に触発されて「クラシックスタイル」に戻る選手が増えてきたとのことだ。「野球」と「靴下」の長く深い関係は。今後もいろいろなエピソードを生んでいくことだろう。
(広尾晃 / Koh Hiroo)