阪神OBが警鐘、過度な期待をかける「バースの再来」 ボーアは「長い目でみないと」

阪神のジャスティン・ボーア【写真:荒川祐史】
阪神のジャスティン・ボーア【写真:荒川祐史】

阪神は2勝8敗の最下位と出遅れ、新助っ人のボーアも苦戦しているが…「長い目で見ないと」

 プロ野球は開幕から10試合が行われ、早くも明暗が分かれている。セ・リーグでは、昨季リーグ終盤に大逆転で3位に滑り込み、クライマックスシリーズ(CS)に進出した阪神が2勝8敗の最下位と出遅れた。まだ始まったばかりで、結果に一喜一憂する段階ではないが、不安要素も見えてきている。

 自慢の投手陣がチーム防御率5.44と苦しんでおり、打線も10試合で19得点、チーム打率.201と深刻な貧打だ。メジャー通算92本塁打を誇り、2017年にはMLBオールスターのホームランダービーに出場した経験を持つジャスティン・ボーア内野手も、4番を任された開幕カードでチャンスに凡退するなど苦戦している。ここまで31打数6安打の打率.194、1打点で本塁打はゼロ。持ち味の圧倒的なパワーを見せる場面はなく、特に左投手相手に9打数無安打3三振と“弱点”を露呈している。

 ヤクルト、日本ハム、阪神、横浜の4球団で捕手としてプレーし、2018年までヤクルトで2年間、バッテリコーチを務めた野球解説者の野口寿浩氏は、新助っ人について「長い目で見ないといけない打者」とした上で「ボーアはバースではない」と言及。「ランディ・バースの“再来”」などと過度の期待をもたせる声に対しては「やめたほうがいい」と釘を刺し、今後は徐々に日本に適応していく可能性があると分析した。一方、6月27日のDeNA戦で9回に逆転3ランを放つ鮮烈なデビューを飾りながら、その後は沈黙しているジェリー・サンズ外野手については「現時点では、厳しいかなという印象」と評した。

 野口氏はまず、ボーアが左投手相手に苦戦している現状について「そもそも、アメリカにいるときから左腕との対戦が圧倒的に少ない打者です。ここ1、2年はプラトーン起用で、相手先発が右腕のときにだけスタメン出場して、左腕が出てくると代打を出されるという使われ方でした。そういう選手なので、日本に来ていきなり左腕を打てと言われても……という感じですよね」と指摘。そして、「ボーアは左投手と対戦する感覚を思い出すところから始めないといけない。しかも、元々が左腕は苦手なタイプ。それをわかって獲得してきているのだから、長い目で見ないといけません。我慢は必要です。かなり特殊な部類に入る選手ですから」と続けた。

 メジャー時代の成績を見てみると、ボーアは右投手に対して打率.262、OPS(出塁率+長打率).836だった一方で、左投手に対しては打率.215、OPS.627。数字に明らかに違いが出ている。右投手との対戦は1566打席、左投手との対戦は384打席と、そもそも相手が左投手のときは試合に出ないことが多かった。

 さらに、メジャーでは当日の対戦相手の先発投手が左腕だからといって、試合前のフリー打撃で左腕の打撃投手が投げるということはない。監督やコーチが近距離から投げるボールを打つという形で、ほとんどが右投げだ。ただ、日本では専門職である左腕の打撃投手を相手にバッティングができる。これがボーアにはプラスに作用すると野口氏は見ている。

「左の長距離砲の新助っ人はみんな『バースの再来』になってしまいますが、それはやめたほうがいい」

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