阪神OBが警鐘、過度な期待をかける「バースの再来」 ボーアは「長い目でみないと」
「左の長距離砲の新助っ人はみんな『バースの再来』になってしまいますが、それはやめたほうがいい」
「メジャーでやっているときは、右腕相手の練習ばかりしていたはずです。でも、日本に来たらそうはいかない。左腕が苦手だからといって、(チームとしての)練習を変えるわけにはいかない。左腕を相手に毎日のように打撃練習をすることになります。試合で左腕との対戦を重ねられるだけではなく、そうやって練習していくことによって、苦手意識が解消されていけばいいなとは思います。まずは“左慣れ”していない状態なのかなという感じに見えるので、日本に来たことによって“左慣れ”してくれればいいなと。打撃練習だけでも、ボールが出てくる角度があります。あれに目を慣れさせる、体を慣れさせる。左投げの打撃投手に投げてもらうことが必要です」
メジャー通算92本塁打を放ったパワーは本物。野口氏は「当たれば飛ばすパワーは間違いなくある。ボーアの場合、バットに当たればOK。当たるかどうかが問題です。無理して引っ張り専門になる必要もありません。甲子園では浜風に乗せるようなバッティングをしてくれれば、どの数字も上がっていくでしょう」とも言う。実際に、開幕2カード目のヤクルト戦からは徐々に変化が見えてきているという。
「練習試合の最後の方から巨人との開幕3連戦までは、ゆったりとした間がありませんでした。じっとしている時間が長くて、急に動き出して打っていた感じでしたが、少しずつ始動が早くなってきてタイミングがゆったり取れるようになってきています。だから、神宮球場でのセンターのフェンス直撃の打球とか、ああいう当たりが出始めました。ボーアは“ヒッチ”するタイプなので、もう一瞬(始動が)早ければさらにいいのでしょうが、開幕カードに比べて間が取れ始めてから上昇気配になりました。よくボールを見ようと思ったら始動が遅れるので、開幕直前からその“度”が過ぎていたのでしょうが、じっとしている中でぱっとバットを出そうと思っても無理ですから。始動が早くなってから、本来のタイミングの取り方が出てきたように見えます」
今後、徐々に本来の力を発揮し始める可能性もあると見ている野口氏。ただ、ボーアの打者としてのタイプは見誤ってはいけないとも指摘する。特に「バースの再来」という表現には引っかかるものがあるというのだ。
「元々、打率3割を打つバッターではありません。メジャーでも、打率.250でホームラン20本くらいという打者です。『バースの再来』という報道がありましたが、そこまで過度の期待をしてはいけません。日本の球場ならホームランは増えるという願望はあってもいいですが、打率に関してはそんなに高いバッターではない。2月の時点で期待を持たせすぎたかなとは思います。ボーアについては、しっかりとチャンスに打てて、ホームランと一緒に打点が増えていくかが重要です。ホームランを30本打っても(チャンスに弱くて)打点が60くらいまでしかいかなかったというのであれば厳しい。チャンスでしっかりと打てて、ホームランの数の3倍くらいの打点を稼いでくれるかどうかが大切です。
バースもメジャーでは活躍できずに日本で成功しましたが、ボーアがバースになれるかというと、そうではない。タイプが違います。左の長距離砲の新助っ人はみんな『バースの再来』になってしまいますが、それはやめたほうがいい。バースの再来じゃないですから」