嫌われ役買ってでた“鬼の副将” 1月引退の伝統が育む加藤学園の献身精神
引退後の3年生が練習を手伝うことで育まれる自己犠牲と献身の精神
代替大会が決まっても、チームは学年関係なしのベストメンバーで試合に臨む。秋の大会では下級生4人がレギュラーに名を連ねており、3年生16人全員が試合に出られるかはわからない。そんな3年生のなかでも、加藤学園の自己犠牲精神の象徴として米山監督が挙げるのが、副主将の野極(のぎわ)友太朗(3年)。秋は出場機会がなかったが、それでもチームのことを第一に考え、自らミスした選手には檄を飛ばす“嫌われ役”を買ってでた。
「最初は自分も試合に出たいという思いもあったけど、それが叶わないなかでチームのために何ができるかを考えられるようになりました。甲子園がすべてじゃなく、人のために何ができるか考えられる人になることが何より大事。夏の中止が決まったときは、自分たちの代は終わった、それなら後輩たちのためにできることをやろうと気持ちを切り替えることができました」
高校野球で教わった献身、自己犠牲の精神。それは前例のない状況を受け入れる強さや、自身の将来にもつながっている。
「自分がレギュラーで出たいという気持ちも、甲子園でやりたいという気持ちも根本は一緒。そこで自分が、自分がという思いを堪えることで、チームの勝利のために動けたり、人の命を救うことにもつながる。卒業後は人の命のために自分を犠牲にできる、消防士になるのが夢です。ここで教わった献身の気持ちを持って、人のために尽くせる仕事に就きたい」
“1月引退”の伝統が育む加藤学園の自己犠牲精神。甲子園初出場と夏のチャンスを絶たれた無念も、選手たちはその犠牲が無意味ではないことを知っている。
(佐藤佑輔 / Yusuke Sato)