鳴り響いたファンファーレに応える4本塁打 北海道で実現した吹奏楽と野球部の絆

鵡川高校吹奏楽部の演奏の様子【写真提供:鵡川高校野球部】
鵡川高校吹奏楽部の演奏の様子【写真提供:鵡川高校野球部】

応援の力に選手たちも応える、鵡川に3本、浦河に1本の計4本塁打が飛び出す

 2002年春の甲子園に21世紀枠で出場した時のエースだった鵡川の鬼海将一監督は二つ返事で引き受けた。「ネットの設置が難しかったら、ケージを置いたままで試合をしてもいい。僕らはいつも町の方たちから力をもらい、育ててもらっている。浦河の選手にもぜひ(町民から)見られるという経験をしてもらいたい」と快諾した。

 さらに、浦河の吹奏楽部が参戦すると聞いた鵡川の吹奏楽部員たちも胸を高鳴らせた。吹奏楽の大会は全て中止となったため、演奏の場を切望していた。当日の天気予報は雨だったため、てるてる坊主をつくって乗り込むほど楽しみにしていた。

 野球部と吹奏楽部だけではない。浦河の写真部員もレンズを構えて、格好の被写体を追った。話を聞きつけた野球部OBが当日の運営を手伝い、父母たちはアルコール消毒を用意して観戦に来た人にマスク着用を呼びかけるなど安全策に奔走。様々な人たちが協力し、心温まる手作りの交流戦となった。

 応援の力は絶大だった。試合は鵡川に3本、浦河に1本の本塁打が飛び出した。「見たこともないようなホームラン。100%応援に後押しされました」と鵡川の鬼海監督は目を見張る。「高校野球に関わっているのは選手だけじゃない。単に試合があればいいという発想ではなく、(安全に)できる方法を探して、見られる中でやらせてあげたい」と夏休みにむかわ町で交流戦を開催すべく動き始めた。

 11日に開幕する夏季北海道高校野球大会は無観客で開催されるため、吹奏楽部が球場に駆けつけることはできない。鵡川吹奏楽部の青野貴文顧問は「中庭コンサートをできないか考えています。毎年(野球部の)全校応援の練習がありましたが、今年はありません。(事前に)中庭で応援を演奏して、聞いてもらうのもありかなと思っています」と代替案を検討している。吹奏楽部の鈴木部長は「今回は行けないけれど、吹奏楽が応援していると思って頑張ってね」と野球部員にメッセージを送る。その言葉を聞いた鵡川野球部の阿部柊希主将は「球場にいなくてもパワーになる。その思いを感じながらプレーしたい」とうなずいた。

【動画】気持ちのこもった演奏が選手を後押し 浦河対鵡川の練習試合での両校吹奏楽部の演奏の様子

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