不可能と言われた“捕手復帰” オリ伏見、アキレス腱断裂から復帰までの1年
昨年6月9日のヤクルト戦以来、捕手での先発出場は396日ぶり
■オリックス 4-4 日本ハム(9日・京セラドーム)
不屈の男が京セラドームの“定位置”に戻ってきた。オリックスの伏見寅威捕手が9日、京セラドームで行われた日本ハム戦で「7番・捕手」でスタメン出場。アキレス腱断裂の大ケガを乗り越え、昨年6月9日のヤクルト戦以来、捕手での先発出場は396日ぶりだった。
「アキレス腱を切ったらキャッチャーはできない。そう言った人たちを見返したいんです」
4回の第2打席でフェンス直撃の三塁打、6回の第3打席では今季1号を放ったが、生き生きとした表情を見せていたのはマスクを被った姿だった。
捕手としてのプライドを持ってキャンプ、そしてシーズンインを迎えていた。昨年6月18日の巨人戦で左足アキレス腱を断裂。すぐさま手術を受けたが細菌が入っていたことが判明し同年9月に2度目の手術。患部の状態が一向に良くならない時は「弱気になっていた日もあった」と、野球人生のどん底を味わった。
それでも2017年に結婚した妻の支えもあり、リハビリをこなしていく上で“捕手復帰”のわずかな光が見え始めた。春季キャンプは2軍スタートだったが「今年中には京セラに戻れると信じてる。もちろん捕手として」と涙を見せながら、自らにハッパをかけ厳しいリハビリ、練習をこなす姿があった。
一時は評価の高い打撃を武器に三塁、一塁にも挑戦したが“捕手のプライド”は失ってはいない。プロ入り後は東海大時代にバッテリーを組んだ「菅野の女房役」として注目されたが「菅野さんが凄かったから……。その呼び方をされない活躍を見せたい」と成功を誓っていた。
本来なら京セラドームに家族を呼び、復活した姿を届ける予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大で無観客試合となり実現することはできなかった。だが、チャンスはまた訪れるはずだ。地獄の底から這い上がった男が最下位に低迷するオリックスに勇気と希望を与えていく。