わずか半年で欠かせない戦力に…未経験者の可能性を証明した函館稜北、最後の夏
未経験者が持つ大きな可能性、部員減少に悩むチームにとってもヒントに
最初で最後の公式戦登板を目標にしていた村上だが、4日に行った函館中部との練習試合でバントした際に右手中指を骨折した。意気消沈しているかと思いきや、意外にもその表情は穏やか。「その試合で投げて、最初の打者から空振り三振をとったんです。自分なりに間合いなどを考えて、2三振奪うことができました。相手の選手から『半年間でここまでできたことをリスペクトする』と言ってもらいました。試合に出られないことは残念ですが、自分なりに高校野球を楽しみながらやってきたので、後悔はないです。試合では声で全力サポートします」とさわやかな笑顔を浮かべた。
野球経験がなくても短期間で上達できることを証明した村上の存在は、チームメートにも大きな影響を与えた。嘉堂主将は「言われたことをすぐに取り入れ、すごいスピードで成長しました。技術うんぬんではなく、頭を使うところは、ずっと野球をやってきた人たちも見習うべき」と一目置くほど刺激を受けたという。
澤田監督の現役時代には未経験者はいなかったという。「(部員数が少ない)今の稜北だから入ってくれたのでしょう。彼らは野球の楽しさを知ったはずなので、将来、自分の子供や近所の子供たちにそれを伝えてほしいです」と将来的な野球人口拡大にも願いを込める。函館稜北最後の世代が示した野球未経験者が持つ大きな可能性は、部員減少に悩むチームにとっても大きなヒントになるのではないだろうか。
7か月間とことん野球と向き合った村上は「全道大会に出たら復活できるかもしれない。そうなれば、チームも活気づく」と出場を諦めてはいない。嘉堂主将は「(村上が)最後に試合に出られるように、勝ち進みたい」とうなずいた。函館稜北最後の公式戦、ゲームセットはまだ早い。
(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)