ファンの後押しは確かに存在する 鷹の3連勝に見た“無形の力”の重要性

ファンの前で「熱男」パフォーマンスを披露するソフトバンク・松田宣浩【写真:藤浦一都】
ファンの前で「熱男」パフォーマンスを披露するソフトバンク・松田宣浩【写真:藤浦一都】

7月10日に有観客試合が再開されると見違えるような戦いを見せたソフトバンク

 7月12日にPayPayドームで行われた楽天戦で6-1で勝利したソフトバンク。今季初の3連勝とし、勝率を5割に戻した。首位を走ってきた楽天に初めて勝ち越し、投打の歯車も噛み合う試合となった。

 6月19日の開幕からイマイチ波に乗り切れていなかったソフトバンク。2カード連続で負け越し、首位楽天との6連戦を借金2で迎えた。しかも、最初の3試合は1勝2敗と黒星が先行。借金は1つ増えて3になった。

 ところが、第4戦からチーム状態は“激変”し、見違えるような戦いぶりで一気に3連勝。投手陣が強力な楽天打線を封じこめ、打線も援護した。特に、それまで大不振だった松田宣浩内野手が72打席目での今季初本塁打を含む2本塁打を放つなど、歯車が噛み合い出した。

 引き金となったのが10日からの有観客試合の再開。これまで無観客で行われていたペナントレースだが、ようやくスタンドにファンの姿が戻ってきた。ソフトバンクの本拠地PayPayドームでは10日に1839人、11日に3419人、12日に4873人と段階的に観客を増やしていったが、そのファンの声援が選手を後押ししたことは間違いないようだ。

 感染防止の観点から大きな声を出しての声援や応援歌を歌うことはできない。それでも1つ1つのプレーに起こる拍手や熱気、ちょっとしたファンの反応が選手の情熱を掻き立てる。ファンがスタンドにいるということで、選手たちの姿は明らかに変わってくる。

 12日の試合で7回1失点と好投し2勝目をあげた石川柊太投手が興味深いことを話していた。観客がいることについて「全然違いますね。お客さんがいると3ボールになったら拍手をしてくれたりするというのは、見えない力は感じていますね」と言い、そして言葉を続けた。

「無観客ではすごく大変だったところ。不安だったり緊張だったり、そういうのがあって、試合が始まるとガッと来るものがある。今日も試合前からしんどかった、メンタル的に。ただ、それから逃げていてもパフォーマンスは出ないんです」

 ファンの声援、そして送られる拍手によって後押しされる部分はもちろん大きい。ただ、石川が言うにはスタンドに観客が入っていることによって、選手に与えるプレッシャーや緊張感が格段に違う。そして、選手がいいプレー、パフォーマンスを発揮する上でこのプレッシャーや緊張が必要なのだという。

 無観客だからプレッシャーがないわけではない。ただ、やはりどこかしら、無観客では緊張感や緊迫感、選手にかかるプレッシャーが欠けていたのは事実としてあるよう。柳田悠岐外野手もまた「お客さんが入ってもらって、ファンの人の思いがチームの力になっている気がする。なんか雰囲気は違うなと感じますね」と“無形の力”を感じ取った。

 工藤公康監督は6回2死満塁で松田宣が放った適時内野安打を例に出し「マッチの内野安打もね、全力疾走は常日頃からやっているんですけど、もう1つ、ファンの人に見られているっていうところが選手の1球1球への集中力に繋がる部分もあるんじゃないかなと思いますね」と語っていた。ファンあってのプロ野球。ファンの声援、思い、祈りは間違いなく選手たちに届いている。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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