8人兄弟の3男、卒業後は家業の農家に…21世紀枠で挑む、甲子園での“引退試合”

帯広農・水上流暢【写真:石川加奈子】
帯広農・水上流暢【写真:石川加奈子】

パワーの源となった農作業、18年夏準Vの金足農から教わった農業高校の誇り

 昨秋は5番打者として7試合に出場し、打率.667、1本塁打、19打点と大暴れした。パワーの源は農作業。小麦やじゃがいもなどを栽培する50ヘクタールの広大な畑で、子供の頃から作業を手伝ってきた。特に手作業で行う除草は「下が柔らかいので力がいる」と格好のトレーニングに。高校の農業科学科では、1時間かけてピンセットを使って大豆を1粒ずつ選別する授業があり、自然と集中力が養われた。

 農業高校の特徴を生かした体づくりも実った。校内で絞った牛乳と栽培した大豆をひいたきな粉を混ぜた“自家製プロテイン”を練習中に摂取すると同時に、校内で採れた野菜を使ったカレーライスなどの補食で増量。昨秋172センチで71キロだった体重は、80キロまで増えた。コロナ禍による休校期間中には、農作業用のビニールハウス内で兄弟にティーを上げてもらい、ひたすらバットを振り込んできた。

 来春の卒業後は長兄と一緒に家業を継ぐ。「小さい頃から農業をやってみたいと思っていました。土や肥料を考え、状態が悪くなった時にはいろいろな判断をしながら、作物の成長を見ることは楽しい」と農業の魅了を語る。野球は高校までと決めており、甲子園交流試合は水上にとって引退試合に。「悔いなくやりたい」と力を込める。

 昨年の夏休みに秋田遠征した際、18年夏の甲子園で準優勝した金足農と練習試合を行って刺激を受けた。「公立でも力強いスイングができるところ、私立に勝てるところを見せたい」と金農旋風に続くつもり。“帯農”の名前を甲子園ファンの脳裏に刻んでみせる。

(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)

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