野球を続けられなかった仲間への思い 連合チーム率いた荒川商主将が挑む“次の勝負”
1918年創部、都内屈指の歴史を誇る伝統校だが、2年後には廃校が決まっている
高校野球東東京大会は26日、江戸川球場で1回戦が行われ、荒川商・葛西南・つばさ総合の連合チームは国学院に1-12の5回コールドで敗れた。1918年創部、100年以上の歴史を誇る荒川商は2022年3月に廃校が決まっており、現在の部員は3年生4人のみ。お笑い芸人のみやぞんさんも輩出した都内屈指の伝統校が、ひっそりと“最後の夏”を終えた。
3校連合は先発の中西瑛斗投手が初回からつかまる苦しい展開。3回にはその中西が適時打を放ち1点を返したが、国学院打線を抑え込むことができずコールド負けを喫した。
荒川商が4人、葛西南が5人、つばさ総合が2人の11人体制。本来であればそこに昨秋も連合を組んだ八丈島の8人が加わりベンチメンバー19人で臨むはずだったが、それもコロナ禍での移動自粛の流れに絶たれた。連合を率いた古溝監督は「コロナの影響もあって、もしかしたら一緒にできないかなとは思っていた。それでも、いざ決定したら選手たちにはショックだったようです」と選手の内心を慮る。
合同練習すらままならず、連合チームにとっては厳しい状況が続いたなか、欠けたメンバーは八丈島だけではない。荒川商の今年の代は入学当初は8人の選手がいたが、学業との両立が難しく4人が退部。この日三塁コーチャーに入った菅野風輝は2週間前に不慮の事故で右手を骨折、大会直前で涙を飲んだ。
一人、また一人と仲間が減っていくなかで連合をまとめたのは、荒川商の廣瀬凪冴主将。卒業後、他の部員はみな就職するが、この春、進路を就職から大学進学に切り替えた。
「うちは商業高校なので、ほとんどが卒業後は就職するんです。自分もコロナになるまではずっと就職がいいなと思ってた。でも、この状況で就職するのはちょっと厳しいかなと。せっかく高校で商業系の勉強をしてきたので、大学でもっとそれを詳しく勉強したい。そして、最後まで野球を続けられなかった仲間の分まで、社会人として大人として、高校球児たちを支えていける立場になりたい」
荒川商OBのみやぞんさんは、高校最後の試合で敗れた際「また頑張って、次は勝とう!」と話し、チームメートから「もう次はないんだよ」とツッコまれたという逸話が残る。102年の歴史に幕を下ろした荒川商、その最後の主将にとって“次の勝負”はもう始まっている。
(佐藤佑輔 / Yusuke Sato)