指揮官の“謝罪”にも「闘いはまだ続いている」 東海大菅生・4番杉崎の反骨心
“憎まれ役”に徹してきた若林監督は「すみませんでした!」と選手に謝罪した
高校野球東西東京大会は10日、ダイワハウススタジアム八王子で47年ぶりの東西決戦が行われ、西東京代表の東海大菅生が3-2のサヨナラ勝ちで東東京代表の帝京を破り、東西東京大会出場243チーム256校の頂点に立った。
相手の先発左腕・田代涼太投手を前に、8回までわずか1安打と自慢の打線が鳴りを潜めた。2点を追う土壇場の9回、無死一、二塁から3番森下晴貴外野手が値千金の2点適時三塁打を放ち同点とすると、そこから2者連続の申告敬遠で無死満塁。6番臼井直生捕手がサヨナラ打を放ち、劇的な逆転勝利を収めた。
西東京大会決勝に続く、2戦連続の逆転サヨナラ勝ち。西東京を制した後のミーティングでも、指揮官から労いの言葉は一切なかった。「ここで負けたら何の意味もねえからな!」。甲子園中止発表後には「お前ら悲劇のヒーローぶってんじゃねえぞ!」、大会途中には「悔しかったら優勝してみろ!」と、ここまであえて辛辣な言葉で“憎まれ役”に徹してきた。
そんな鬼監督に「今日は選手に謝らなきゃいけない。大したもんです。すみませんでした!」とついに謝罪の言葉を口にさせたナインだが、全員が全員この日の勝利に胸を撫でおろしているわけではない。
大会を通じて4番に座りながらも目立った活躍ができず、この日も3打数無安打に終わった杉崎成は「自分は個人的に悔しい結果に終わってしまった。2年生の方が試合に打っていて、結果的には自分たちの方が助けられた」と悔しい思いを吐露。「自分は監督に言われっぱなしのまま終わってしまったが、まだここで終わりじゃない。この先上の舞台で結果を残して見返さないと。監督との闘いはまだ続いています」と前を向く。
甲子園がなくなり行き場のなくなった思いを、いつしか監督を見返してやるというエネルギーに昇華してきた選手たち。思った活躍ができないまま最後の夏を終えてなお、その胸に灯った火は消えてはいない。
(佐藤佑輔 / Yusuke Sato)