女房役が下した「15点」の真意 プロを目指す健大高崎・下慎之介への辛辣エール
チームで唯一プロ志望届を提出している下は4回5安打3失点と精彩を欠いた
新型コロナウイルスの影響で中止となった選抜出場予定32校による「2020年甲子園高校野球交流試合」の大会5日目が16日、甲子園球場で行われ、第2試合では健大高崎が1-4で帯広農に敗れた。先発の下慎之介投手は4回5安打3失点で降板。チームで唯一プロ志望届を提出しているエースの不甲斐ない投球に、中学時代からバッテリーを組む主将の戸丸秦吾捕手は試合後、厳しい言葉を口にしたが、その裏には下を案じる女房役なりの思いがあった。
下は2回、制球難から走者を背負うと3安打を浴び2失点。裏に8番戸丸の左越え適時二塁打で1点を返すも、3回にはスクイズを決められ追加点を許した。5回には2番手長谷川秀投手が代わり端につかまり1失点。以降は1イニングごとに細かい継投でつなぐも、序盤の失点が重くのしかかった。
試合後、報道陣の前に姿を現した戸丸主将の表情は固かった。「甲子園でプレーするのを目標としてやってきた選手ばっかり。気持ちの整理がつかない状態です」と切り出すと、先発の下について「全然ストライクも入っていなかった。調子が悪いという一言では済まされない。(投球は)15点くらいです」と厳しい言葉を口にした。
中学時代からバッテリーを組む相棒だからこそ、黙ってはいられなかった。下自身は「自分の進路に関しては個人的な感情を持ち込んじゃいけない。チームで勝ちたいという気持ちで臨みました」と語ったが、県内無敗を目標に臨んだ群馬県大会で、戸丸は「これだけメディアやスカウトの方がお前目当てに集まってんだぞ。その期待には応えろよ!」とエースの将来を案じるがゆえに強い口調で奮起を促した。ましてや甲子園はまたとないアピールの場。「あんまり甘やかすつもりはない。今日のことを次の舞台でいかしてもらえたら」と素っ気ないながらもエールを送る。
「自分が目指す舞台は、今日のような投球を続けていてはダメ。自分にこういうところがあるという課題が見つかった。まだ伸びしろがあると捉えて、これから一層練習を積んでいきたい」と語った下。女房役からの愛のムチを力に、強い覚悟でプロの舞台へ進む。
(佐藤佑輔 / Yusuke Sato)