球児に寄り添い、勝負に徹する…若き高校代表を言葉でまとめた小枝守氏の軌跡
西武・今井達也、日本ハム・堀瑞輝…4年前のU-18で刻まれた指揮官との絆
日大三(西東京)、拓大紅陵(千葉)で春夏通じて10度、甲子園に出場し、2016~17年は侍ジャパン・高校日本代表の監督を努めた故・小枝守氏が24日、午後10時からJsports1で放送の『結束!侍ジャパン』で特集される。4年前の夏、高校球児として戦った今井達也(西武)や堀瑞輝(日本ハム)、鈴木将平(西武)、九鬼隆平(ソフトバンク)、藤嶋健人(中日)、寺島成輝(ヤクルト)らを率いて、「第11回 BFA U18アジア選手権」(台湾)を制した激闘の様子を中心に紹介。頂点に立つまで、小枝監督がチームに陰ながら行っていた気遣いをカメラは捉えていた。
高校野球は人間教育という信念を、侍ジャパンのユニホームを着ても実践していた小枝監督は、日本トップレベルの球児たちを集めても、かける言葉ひとつひとつに意味と責任を持っていた。例えば、台湾との決勝戦。作新学院で夏の甲子園優勝投手となった今井を先発に立てた。背番号18に対して、ベンチでかけていた言葉は印象的だった。
決勝戦。今井の制球力は本来の力ではなかった。それを見抜いた指揮官は試合中に“突貫工事”を行っていた。このまま行っては流れが傾くかもしれない―。試合中にベンチ内に呼び寄せ、技術指導を行うと今井は制球力を取り戻した。今井は5回を投げ、無失点。6回以降、広島新庄でエースだった堀瑞輝を起用し、無失点リレー。1-0で勝利し、アジアの頂点に立った。
技術指導も的確なアドバイスでなければ、今井も理解できなかっただろう。今井は小枝監督への感謝を大会後に伝えている。降板した直後、指揮官は今井に「ダメで代えたんじゃないから、俺が勝負張っているだけの事」と語りかけている。選手へのアフターケアも忘れてはいない。また、今井が試合中にブルペンに行って修正をするなど、その一部始終が密着映像に残っている。
他にも堀への信頼、グラウンドに到着してから必ず行うルーティンの数々のシーンも収録されているが、すべては選手たちへの思いに繋がっていることばかり。2019年1月にこの世を去る直前に残した著書「球児に響く言葉力」(竹書房)の中から、名言の数々も紹介。球児に寄り添い、勝負に徹していた指揮官の言葉に耳を傾けると、指導者の温かみを感じ取ることができる。
拓大紅陵時代も小枝監督は教壇にも立ち、生徒たちに言葉を送っていた。直筆でしたためたメッセ―ジを卒業後、大切にとっている生徒も多い。また、プロに進んだ元ヤクルトの名外野手・飯田哲也氏に贈った「子供には夢を、大人には技と感動を」という言葉には、プロ野球選手としての在り方が凝縮されている。飯田氏は現役中、ずっと胸に抱いていたという。教え子たちに残した言葉は色あせることはない。
(Full-Count編集部)