巨人戸郷が叩き出す菅野や中日大野雄を凌ぐ数字 セイバー指標で見る8月の月間MVP
戸郷は9連勝中の菅野や5連続完投勝利中の中日大野雄よりもRSAAで優れる
・8月月間MVP:セ・リーグ投手部門
投手評価には平均的な投手に比べてどれだけ失点を防いだかを示す指標RSAAを用います。ここでのRSAAはFIPベースで算出します。
各チームのRSAA上位3名は以下の通りです。
巨人 戸郷翔征5.81 菅野智之4.72 中川皓太1.92
DeNA 山崎康晃2.21 エスコバー2.18 今永昇太2.21
阪神 高橋遥人3.61 ガンケル2.64 青柳晃洋1.86
広島 森下暢人5.50 フランスア2.22 島内颯太郎1.89
中日 ロドリゲス4.06 大野雄大4.03 勝野昌慶2.33
ヤクルト 今野龍太2.83 石山泰稚2.06 小川泰弘0.83
公式の月間MVPの有力候補としては、以下の4人が有力な候補となるでしょう。
大野雄大(中日)
登板3 3勝0敗 防御率0.67 奪三振27 奪三振率9.00
被本塁打2 WHIP0.59 QS率100% HQS率100% K/BB6.75
※3試合すべて完投勝利
小川泰弘(ヤクルト)
登板5 3勝2敗 防御率2.29 奪三振27 奪三振率6.88
被本塁打4 WHIP0.96 QS率80% HQS率80% K/BB3.86
※8月15日ノーヒットノーランを達成
菅野智之(巨人)
登板4 4勝0敗 防御率1.50 奪三振21 奪三振率6.30
被本塁打1 WHIP0.77 QS率100% HQS率100% K/BB7.00
森下暢人(広島)
登板4 3勝0敗 防御率1.80 奪三振29 奪三振率8.70
被本塁打1 WHIP0.83 QS率 100% HQS率75% K/BB4.83
大野雄大の8月3完投を含め、現在まで5戦連続完投していること、菅野智之の8月4連勝を含め開幕9連勝していること、小川泰弘がノーヒットノーラン達成と、大記録が目白押しのために誰が選ばれてもおかしくない状況と言えるでしょう。
そんな中でRSAAでは月間の既定投球回数に達していない戸郷翔征がリーグ1位でした。ただ既定投球回まであと2/3回ですし、投球内容は群を抜いていた記録を残しています。よって8月の月間MVPとして戸郷を挙げたいと思います。
戸郷翔征(巨人):RSAA 5.81
登板4 4勝0敗 防御率 0.37
奪三振32(リーグ1位)奪三振率11.84 被本塁打0
WHIP1.03 QS率50% HQS率25% K/BB3.20
なお、戸郷と森下は今年の新人王を競う形となっています。
戸郷 9試合7勝2敗 防御率1.90 奪三振率10.0
森下 9試合5勝2敗 防御率2.19 奪三振率9.34
と、これらの指標では戸郷が有利ですが、イニング数やQSで見ると
戸郷 イニング52 完投0 QS率55.6%
森下 イニング61回2/3 完投1(完封1) QS率77.8%
と、先発投手としてイニングイーターぶりを発揮しているのは森下です。戸郷が後半戦イニング数を稼ぐ投球ができるかどうかが、新人王獲得に向けての試金石となりそうです。
鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。近著に『統計学が見つけた野球の真理』(講談社ブルーバックス)『世の中は奇跡であふれている』(WAVE出版)がある。