前田健太、新人捕手と初バッテリーで見えた新たな境地 投球の妙味に触れた夜
前田を活気づけた“一生懸命なリード”
一方、大リーグデビューから2週間のジェファーズは実にユニークな“構え”で前田を導いていった――。
片膝に飽き足らず終始ミットを地面に着けた。「この球は絶対に低く」というメッセージを発信するため日本の捕手がよく見せる姿も、こちらではその比ではないだけに、高い制球力を持つ前田が低めへの意識を強く持ち続けられた一要因として捉えたい。
さらに、23歳の新人捕手は工夫を施した。6回2死から対峙した1番レイエスには一転、中腰になり高めを要求すると、その後は地面に着けたミットと腰を浮かせて構えたミットを前田に交互に見せ、最後は外角低めに沈むチェンジアップで4球三振の道筋を作り、8個目の三振を演出した。
フレーミングはお世辞にもいいとは言えないが、“一生懸命なリード”はマウンドの前田を活気づかせ、気分的に盛り上げた。
付言すれば、前田降板後の8回、ジェファーズは二盗を試みた走者に両膝を地面に着けたまま送球。意図的にワンバウンドさせたボールは手から滑り込む走者のヘルメットへと弾みベースカバーの野手のグラブにドンピシャリのタイミングで収まる離れ業で流れを絶ち切った。
ここまで8試合の登板で5試合にマスクを被ったアビラがこの日、腰の張りで10日間の負傷者リスト入り。前田にしてみれば多少のやり難さも覚悟したマウンドだったが、自身の投球術を遺憾なく発揮し、新人捕手のスリリングな奮闘に乗せられていった91球だった。
「次の登板に向けても気持ちよく迎えられると思います」
図らずも、新人育成の一端にも寄与できた登板が「気持ちよさ」を連れてきたと言えば、穿ち過ぎだろうか。
(木崎英夫 / Hideo Kizaki)