ドラフト上位候補の東海大155キロ右腕・小郷 数百回の“パワプロ修行”で得た「読む」力
最速155キロの剛速球に加え、ゲームの対戦で得た配球力が武器に
秋季首都大学野球リーグが開幕し、連日ドラフト候補たちにスカウトの熱い視線が注がれている。20日に行われた筑波大戦の8回に登板し、2回1安打1失点(自責0)で負け投手となった東海大・小郷賢人投手はドラフト上位候補にも挙げられる最速155キロ右腕。もともと力で押すタイプの投手だった小郷だが、配球面での成長の裏には、同じくドラフト候補でありながら怪我のため今秋のプロ志望届提出を見送ったチームメートの尽力があった。
1-1の同点で迎えた8回、小郷がマウンドに上がると、ネット裏に陣取ったスカウト陣が慌しく動いた。立ち上がりを3者凡退。9回には内野守備の乱れが重なり1点を献上したが、最後まで上位候補らしく堂々とした投球を披露した。
そんな小郷にスタンドからエールを送ったのが、昨季チームの勝ち頭でありながら、今年3月にトミー・ジョン手術を受けノースローが続く山崎伊織投手。小郷については「誰よりも野球に真摯なやつ。投手陣のなかでも一人だけ別格の雰囲気がある。ピンチの場面での登板が多いですが、何事にも動じないピッチャーです」とその実力を認める。
そんな山崎と、ゲームが趣味だという小郷は、昨年秋から毎日のように練習後に野球ゲームの「パワプロ」で対戦。グラウンド外でも人知れずしのぎを削ってきた。「試合で疲れてるときを除いて、毎日必ず1試合。7割は自分が勝つので、“泣きの1回”を頼まれることもありました」というほどで、対戦回数は数百試合にも及ぶという。
いわゆる息抜きで始めたパワプロだが、対戦回数を重ねるにつれて“読み合い”の勝負に突入。山崎も「小郷はもともと力で押すタイプのピッチャー。それがパワプロの対戦で配球面についても考えるようになった。現実の野球にも好影響? そうですね、それはあると思います」と認める。
この日は惜しくも負け投手となってしまったが、東海大の安藤監督も「コロナ前に肘を痛めてうまく力が入らなくなっていたが、フォームを一から見直して逆に荒れ球が少なくなった。それが(配球面でも)いい影響を与えている」とその成長を口にする。155キロの剛速球と“パワプロ修行”で培った配球面での読みを武器に、来るドラフトへ向け最後の猛アピールを続ける。
(佐藤佑輔 / Yusuke Sato)