3連覇が遠のく西武はなぜ苦戦? データも示す埋められなかった“秋山翔吾の穴”

先発投手のQS率はリーグワースト、なかなか1番は定まらず

 また、その先発投手もクオリティスタート(QS)率34.5%とリーグワースト。ノーヒットノーランまであと一歩の快投を披露した高橋光成や、ルーキーで先発として2連勝した浜屋将太など若手の台頭も見え始めているが、まだまだ駒不足の感は否めない。

 辻監督の今季の構想としては秋山に代わる「1番・中堅」として金子侑司を起用する算段だったが、オープン戦でも打撃の調子が上がらず、開幕は1番に新助っ人のスパンジェンバーグ、9番に金子を配置した。7月5日に金子が登録抹消となると、1番には鈴木将平を起用。起用されてから6試合連続安打、14試合連続出塁と期待に応えていたが、その後ぱったりと出塁が途絶え、9月5日には足首を負傷し登録抹消となってしまった。9月に入ってからは外崎が1番に入ることが多くなったが、その外崎も9月以降の出塁率が.260と、今年の西武は1番が“鬼門”となっているようだ。

 鬼門といえば、昨季攻守に大車輪の活躍を見せてMVPにも輝いた森友哉が今季は開幕から苦戦している。その要因を探ると、それまで.300を下回ることのなかったBABIP(フィールド内に飛んだ打球がヒットになる割合)が今季は.294にとどまっている。空振り率やコンタクト率に大きな変化がないことから、打球の質に大きな変化が生じたか、もしくは森に対するシフトに効果があったかなどの要因が考えられる。

 川越誠司、高木渉、山野辺翔、柘植世那といった若手がそろそろレギュラークラスを脅かす存在にならなければチームの新陳代謝が進まないだろう。

鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。近著に『統計学が見つけた野球の真理』(講談社ブルーバックス)『世の中は奇跡であふれている』(WAVE出版)がある。

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