楽天と首位ホークスの差は? 元ヘッドが指摘した細かいプレー「牽制死だけは…」

代走の盗塁死と牽制死は「同じように見えて大違いです」

 実際にアウトになるまでに、ソフトバンク側は辰己の足を警戒し、しつこいくらい牽制球を投じていた。藤田の打席中に石川が2球、嘉弥真は7球。辰己が誘い出されたのは、なんと9球目の牽制球だった。

 シーズン76盗塁(1983年)のセ・リーグ記録保持者でもある松本氏は「この場面で、辰己が絶対に避けなければならなかったのが、牽制でアウトになることでした。捕手の二塁送球で刺されるのなら諦めがつくが、牽制死では味方の士気が下がる。そこは同じように見えて、大違いです」と語る。辰己の場合、記録上は「盗塁死」だが、状況は牽制死同然だった。

 送りバントが決まらなかったことで、ぜひとも二盗を成功させたいシチュエーションとなり、辰己にしてみれば相手はスタートを切りにくい左投手。しつこく牽制球を投じられ、重圧は増すばかりだっただろう。それでも松本氏は「リードを少し小さめにすれば、あそこまでは牽制されず、結果的にスタートを切りやすかったかもしれない。また、相手の守備隊形によっては、投球がホームベースを通過する瞬間を目安に、虚を衝いてスタートを切るディレードスチールという手もあった」と選択肢を示す。結局、楽天は続く8、9回にソフトバンクに加点され、点差を広げられた。

 楽天打線は1日現在、いずれもリーグトップのチーム打率.257と422得点を誇る。しかし、ソフトバンクを引きずり下ろし優勝を手にするには、もう一歩、細かいプレーの徹底と工夫が必要なのかもしれない。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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