勝利よりも成長、機会、結果で1軍へ 元ハム田中幸雄氏が語る2軍監督の役目とは?

1軍に選手を送り出す。「ファーム監督」の役割

 浅間選手は2014年のドラフト3位で入団。田中さんがファーム監督に就任したのは2015年シーズンからであり、そのルーキーイヤーから見守ってきた選手だ。そんな浅間の魅力は「野球に対する隙のなさ」であるという。

「1軍のレギュラーをつかんでもおかしくない選手。走攻守全てがすごく堅実で、やるべきことがしっかりできる。今は1軍に近藤健介と西川遥輝と大田泰示がいるじゃないですか。そこに入っていく候補かなと思いますね。試合に出る機会を与えてもらえたら、十分レギュラーになれる素質のある選手です」

 その評価通り、浅間選手はファーム22試合に出場、打率.328、9盗塁の好成績を残し、8月12日に1軍昇格の切符をつかんでいる。昨季は故障にも苦しんだが、ここからの巻き返しに大きな期待が寄せられる選手だ。

 ファームで活躍した選手についてはファンの間でも話題に上がるが、その首脳陣については話題に上がりにくい。そこで「ファーム監督」の仕事について話を聞いた。

「ファームの場合は育成環境というものがあるので、選手の起用法などは1軍と全部違いますよね。1軍はある程度レギュラーが決まっていて、その選手主体で勝つためにやりますが、ファームの場合は各選手を1軍に送り込むためにその選手の能力を、技術力を伸ばしてあげるために試合を経験させて、1軍に向けて準備させていくという場所だと思います」

 勝利が最優先事項となる1軍に対して、ファームで重要になってくるのは「成長」と「機会」そして「結果」だ。浅間のように、結果を残し続けることで1軍昇格のチャンスは必ずやってくる。ファーム監督としてそうした選手を送り出す際の期待は、ファン以上のものがある。

「とにかく……とにかく与えられたチャンスを生かして結果を出してほしい。ハラハラドキドキじゃないですが、頑張ってほしいという気持ちがありますよね。

 それで結果を残してくれると本当にうれしいです。もちろん内容も大事ですが、やはり1軍に上がると、どうしても結果が求められます。フルに自分の持っているものを1軍で出せて、結果を出してもらえたらうれしいです」

 最後に、ファームの現場を知る田中さんにとって「ファームの魅力」とは何かを聞いた。

「それは鎌ケ谷にきているファンの方が知っていると思います(笑)。やっぱり、ファーム本拠地の鎌ケ谷でも多くのファンの方が来て、よく顔を見かける人もいます。新しい選手も入ってきて、その選手の成長を見届けるというか、1軍に上がるまでの成長を見るのが楽しいという方も多いですね」

 日本ハムの本拠地であるファイターズ鎌ケ谷スタジアムはマスコットの「カビー」を中心に、ファームオリジナルグッズなどさまざまなコンテンツを発信している。1軍とはまた違った楽しみ方を見つけられるかもしれない。

(「パ・リーグ インサイト」吉田貴)

(記事提供:パ・リーグ インサイト

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