衰え知らぬ西武・中村剛也の凄さ 豪快弾と勝負強さを生み出すものとは?

本塁打を放つための引き出しの多さ

 基本的には、本塁打になる打球といえば、飛距離がより伸びやすい引っ張りの割合が多くなるのが普通だ。だが、中村は引っ張りだけでなく、逆方向へも多くの本塁打を記録できるだけの技術を備えている。400本を超える数の通算ホームラン数は、打球をフェンスオーバーにできる引き出しの多さの賜物でもあるだろう。

 ここでは、具体的な例として、2019年シーズンに中村が記録した本塁打の中から4本をチョイスし、その内容について見ていきたい。まずは、中村本人にとっても大きな節目となった、7月19日のオリックス戦における通算400号本塁打だ。

 増井浩俊投手が投じた高めの変化球を豪快に引っ張り、豪快にレフトスタンドに突き刺したサヨナラホームラン。史上20人目となる通算400本塁打の大台に到達した記念すべき打球は、まさにホームランバッターとしての中村を象徴するかのような、あまりにも豪快な一発だった。

 次に、同じく左方向への打球の中から、5月16日のソフトバンク戦で放った同点本塁打について見ていく。

 右打者にとってはタイミングの取りづらい右のアンダースローである高橋礼投手が相手だったが、高めに入ってきた球を打ち上げると、打球は長い滞空時間を経てホームランテラスを超え、スタンドまで飛び込む本塁打に。先述の通算400号のような力強い打球だけでなく、本塁打を打つための“引き出し”の多さを感じさせる一発ともいえるだろう。

 続けて、ここからは逆方向への打球についても紹介したい。5月17日のオリックス戦で放った、2試合連続となるホームランだ。

 延長10回に1点を勝ち越した直後という場面で、小林慶祐投手が投じたアウトコースの速球を鮮やかに流し打ち。鋭いライナーとなった打球はあっという間にスタンドまで到達し、チームに貴重な追加点をもたらす一打となった。逆方向への打球ながら非常に力強い弾道を描くその打球は、中村が持つしなやかなスイングと、高い技術の賜物といえよう。

 最後に、同じ右方向への打球をもう一つ紹介したい。5月10日の日本ハム戦で生まれた、3点ビハインドから一気に試合をひっくり返したグランドスラムだ。

 上沢直之投手が投じた高めの直球を拾って右方向に流し打ち、高く上がった打球は広い札幌ドームのフェンスを越える満塁本塁打に。先程紹介した逆方向へのライナーとは大きく異なる打球の質でもあり、逆方向に届ける本塁打を打つための引き出しも多く備えていることがわかる。

 以上のように、中村はわずか1シーズンのみに着目した場合でも、さまざまな種類の本塁打を見せてくれる選手だ。30代後半を迎えても持ち前のパワーと技術を活かして30本のホームランを記録した中村が、現役選手の中でも随一の本塁打数を記録している理由の一端が、今回紹介した本塁打群からもうかがえよう。

リーグ全体が極端な投高打低だった時代にも、圧巻の打棒を披露

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