救援一筋の燕・五十嵐を成長させた異国での経験 勘違いが生んだまさかの「先発」
打撃コーチの勘違いが発端で先発に「高橋さんは左で俺は右なのに…」
経緯を紐解くと、トマテロスの打撃コーチの勘違いが原因だった。五十嵐がメッツに所属していた当時、その打撃コーチも同じメッツで働いており「彼ならメッツにいた時も先発とリリーフの両方をしていたから、先発もできる」と監督に進言。だが、その“彼”は、同時期にメッツに所属していた高橋尚成だと勘違いしていた。
「高橋さんは左で俺は右なのに……」と、思わず頭を抱えた五十嵐。監督から「ほかに先発がいないから、先発をしてくれないと困るんだ…。何とかならないか?」と頼まれると腹を決め、プロ18年目で初めて先発として投げることを決断したという。
「リリーフよりも先発のほうがイニングもたくさん投げられるから、試したい球もたくさん投げられる。それならいいかと思った」
ウインターリーグ挑戦の目的は、新球スプリットを試すことだった。当時は直球、フォーク、ナックルカーブなどが武器。それに加え、フォークよりも球速が速い落ちるボールを投げられないかと模索していた中で巡ってきた先発機会を前向きに捉え「先発・五十嵐亮太」が誕生した。
メキシコでは約1か月半プレー。7試合のうち5試合に先発し、3勝2敗、防御率はチームの先発陣の中でトップの1.93をマークした。37回1/3を投げ、49奪三振で「メキシコの打者は初球から積極的に打ちに来ない」とストライク先行のピッチングでテンポ良くアウトを重ねた。
チームメートには、WBCにも出場したメキシコ代表のアルフレド・アメザガ内野手や、2019年にオリックスでプレーしたジョーイ・メネセス内野手、2017年から2年間広島に在籍したラミロ・ペーニャ内野手、メジャー通算17勝のメキシコ代表エドガー・ゴンザレス投手らがいた。「メキシコのウインターリーグは日本の1軍と2軍の間くらいのレベル」だったといい、チーム内でも外国人枠の争いがある中、そのポジションをメジャー経験のある米国人投手らに明け渡すことはなかった。