「勝敗がすべてではない」広澤克実理事長に聞くポニーリーグが目指す在り方

「時代は変わりました」「時代に合った、子供たちに合った教育を進めていくべき」

――子どもたちを怪我や障害から守るべきだと実感した出来事や経験があればお聞かせください。

「我々の世代はそもそも『水を飲むな』という世代です。水を飲んだだけで、当時の指導者からぶん殴られる。何しろ『走れ、走れ』の時代だったんです。でも、時代は変わりました。かつての野球全盛期にはチームに子どもが80人入っても(怪我などで)ポロポロと辞めて残るのは20数人でした。

 今回、投球数リミットを作ったのも、肘の故障予防としてアメリカで作られたレギュレーションを取り入れています。アメリカには数多い手術例、データが出ている。ポニーリーグでは、アメリカで安全だとされる投球数の7、8割の数でやっています。その方が、さらに安全なので。

 危険なものとして、バットにも注目しました。日本で使われている金属バットの性能は相当いいです。でも、子どもたちがその打球をライナーで受けたらどうなるのか、という疑問はありました。ポニーリーグ協会専務理事の那須さんと話し合って、我々は飛ばないバット(国際標準バット)を使って子どもたちに少しでも危険が及ばないようにしよう、という努力もしました。まだまだ至らないところもあるかもしれませんが。

 大会を見ても、通常のトーナメントの場合、1回戦で敗れると1回しか試合ができない。でも、ポニーリーグでは負けたチーム同士で試合をしています。勝ち上がって優勝するチームが4回くらい試合をする場合、1回戦で負けたチームも3、4試合はできる。試合をして野球を覚えることが大事です。野球というツールは人間形成に役立つものだと思っています。人間はどんな時期に成長するかわからない。だからこそ、試合を通じて野球を楽しんでほしいと思います」

――子どもを成長させる上で大人たちが果たすべき役割について、お考えがあればお聞かせください。

「ポニーリーグの選手の親は30代、40代が多いと思いますが、どうしても(勝ち負けにこだわって)感情的になりがちです。『それは違うんだよ』という姿勢を見せていくのが、我々の役割だと思っています。協会として、監督、コーチにも『勝ち負けがすべてではない』ということを強く申し上げていますし、時代に合った、子供たちに合った教育を進めていくべき。チームに入った当初、中学1年生の頃と、3年生になった時の保護者の皆さんではだいぶ考え方が変わってきています。ぜひ我々の理念を知っていただきたいですね」

「あの金本の打球が甲子園の浜風で押し戻されたのに、今では高校生がホームラン」

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