涙こらえた“最後のキャッチボール” 燕・五十嵐が語った最高の戦友・石川との絆
ギリギリまで自分の可能性を信じた、だけど…
五十嵐投手のヤクルトでの姿を見ていていつも感じていたのは、そのストイックさ。試合前の投手陣の練習が終わると、投手陣の練習場であるこぶし球場を一人で何度もランニングしながら往復。大粒の汗を流しながら、常に自分と向き合っているように見えていた。
昨年、ホークスからスワローズに戻ってきた時には、笑いながら「もうおじさんだからさ」といった言葉も聞かれたが、「ギリギリまで自分の可能性を信じ続けて、本当に最後、抑えるためだったらどんな方法でもいいなと思う時期もあって、恥ずかしい話ですけどサイドスローで投げてみたりする時期もあって。本当にそれくらい自分のやってないことはないんじゃないかというくらいやってきました」と、とにかく努力を惜しまなかった。
引退会見では言葉の節々に後輩たちへの思いもたくさん感じ取れた。
五十嵐投手自身は、一緒に過ごしてきた先輩たちの姿を見て、自ら学ぶことが多かった。だからこそ、後輩たちにも言葉だけでなく先輩のプレーや行動から“感じ取る力”を身に付けてほしいと願っている。
「今の(ヤクルトの)若い子たちには迷いがある気がする。野球というものにどう向き合って、自分はどうなりたいのか、しっかりしたビジョンを持って自分が誰にも負けないものを一つでも二つでも見つけてほしい。そしてどんな時もグラウンドに希望を持って立ち続けて欲しい」
若手だけでなく、野球少年少女たちにもメッセージを送った。「まずは野球を楽しんでもらいたい。その先に勝負の厳しさだったり、また違った楽しさがあるけれど、何か一つのことを一生懸命やることによって今まで見えてこなかった世界であったり、乗り越えた時の喜びというのがあるので、それを経験してもらいたいなと思う」そう後輩たちにメッセージを送るその姿はとても力強かった。
実は会見中、もう一つ、五十嵐投手が涙を我慢していように感じた瞬間がある。スワローズで野球人生を終えられたその気持ちを聞かれた時だ。昨年、ヤクルト復帰後初の勝利投手となり、ヒーローインタビューを受けた時に感じたファンの姿について明かすと、じっくりと目をつむり、まるでその光景をその場で思い出しているかのようで、私も胸がいっぱいになった。
「ここ数年というのは、ファンの方の声援に背中を押されてどうにかやってこれたというのが強いので、とても感謝しています」
引退試合は25日の中日戦。神宮球場で浴び続けた声援に代わる、忘れられないほどの大きな拍手を五十嵐投手に贈りたい。23年間、本当にお疲れ様でした。
(新保友映 / Tomoe Shinbo)