元広島・高橋慶彦氏がばっさり斬る“育成論”「指示待ちの子供を作っているのは大人」
メンバーが入れ替わっても変わらない、チームの伝統をつくるには
33試合連続安打の日本記録保持者で、1970年代後半から1980年代前半にかけて広島カープ黄金期のレギュラー遊撃手として活躍した高橋慶彦氏。最近はプロ野球解説の他、飲食店の監修など、活動は幅広い。小・中学生の指導に携わることもあり、特に小学生指導の現場で、気になることがあるという。
少年野球の指導者から高橋氏に持ちかけられる相談の中で、定番となっているのが「自主性を持って練習に取り組んでほしいのだが、指示待ちの子供ばかりで……」というものだ。こういう質問を聞くと、首を横に振る。
高橋氏は「俺に言わせれば、子供から自主性を取り上げているのは大人ではないか」と訴える。
指導のために少年野球チームを訪ねると、監督やコーチが「早く並べ」、「キャッチボールを始めろ」と子供たちに大きな声で指示を出している。問題はこんなどこのチームにもある日常に潜んでいる。
「結局、子供たちに考える時間を与えていない。そういう場合は、俺だったら、大人は極力、口を出さない方がいいと思う。たとえば、キャプテン1人に用件を伝え、あとは子供同士で声を掛け合い、注意を促し合いながら練習を進めるべき」
もっとも、こういうやり方は時間がかかる。最初は大人の指導者の意図が遅々として伝わらず、イライラした指導者が大声を張り上げてしまうケースも多い。高橋氏は「そこは“急がば回れ”のことわざ通り。じっくり時間をかけるつもりで、キャプテンに『キャッチボールの準備をさせなさい』、『自分たちでやりなさい』と促すべき」と語る。
「子供同士の間にコミュニケーションが生まれれば、自然に上級生は下級生、技術が上の者は下の者の面倒を見るようになる。やがて、荷物運びなどの雑用に至るまで、メンバーが入れ替わっても変わらない、チームの伝統ができていく」と実感している。
少年野球指導で大人に求められているのは、第1に技術指導。チームの統制に関しては、子供同士で注意を促し合えるようになるまで、我慢強く見守ることなのかもしれない。プロ野球界のレジェンドも、こうして日本野球の裾野の充実に気を配っている。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)
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