岩隈の引退会見に花添えた最後の“グータッチ” 喜びと苦しみ知る原監督から贈る言葉
岩隈が「全力の一球だった」と明かしたシート打撃の一部始終
「その日を迎えました。僕はあえて、スタンドから背番号21の姿を見ていました。ただ、私の知り得る岩隈投手というのはそこには見えなかった」
岩隈が会見で「全力の一球だった」と放った一球目は打者の肩に当たり、右腕はそのまま膝をついていたという。原監督も「彼も懸命に投げたボールだった」と気持ちは伝わった。しかし、診断の結果、右肩を脱臼。他にも要素はあるが、これが引退を考えるきっかけとなった。
一部始終を伝えると、さらに言葉に力がこもっていく。新たな一歩を踏み出すことになる岩隈の背中を押した。
「燦然と輝くレジェンドだと胸を張って欲しい。ユニホームを脱ぎ、これから先も、人生は遥かに長いわけですから。野球人として、社会人として、生きていこう、と。2人の夢は叶いませんでしたけれども、非常に最後の最後まで、2人の中で戦っていこうという思いは私も非常に強く印象に残っています」
岩隈も原監督だったから、その胸に飛び込んだのだろう。共に描いた「戦力として日本一」になる夢は叶わなかったが、巨人のユニホームを着た2年間は、今後の人生にとって大きな財産となる。
サプライズ登場は短い時間だったが、情愛溢れるものだった。
「(2009年に)世界一の監督にしてもらったという、その感謝も忘れません。花を添えて、送れたというのは私としても光栄ですし、本当にご苦労様でした。素晴らしい野球人生だった。ゆっくりしてもらって、第二の人生をスタートしてほしい。お疲れ様でした」
最後に叶わなかったグラウンドでの“グータッチ”をして、原監督は会見上を後にした。21年間の実績と名誉を称えたその言葉は、贈った鮮やかな花のように、岩隈の最後のキャリアも彩った。
(楢崎豊 / Yutaka Narasaki)