「あそこで首を振れたのが成長」 広島3位の八戸学院大・大道が真っ向勝負のラスト登板

来年のドラフト候補の東北福祉大・小椋「今までの野球人生の中で一番、いいピッチャー」

 試合は8回に八戸学院大が追いつき、2-2で延長に突入。延長10回からは無死一、二塁のタイブレークで、2番から攻撃がはじまる東北福祉大は代打・安里樹羅(3年、健大高崎)がバントを決めて1死二、三塁とした。この日、3度目の元山との対峙は144キロ直球で遊飛に打ち取った。元山は「試合前、『お前の時は思いっきり放る』って言われていたので、僕も気合いでいったろと思ったんですけど、気合いでいくタイプじゃないので空回りました」と頭をかいた。

 元山を抑えたが、なおも2死二、三塁。4番・小椋は来年のドラフト候補として興味を示すスカウトもいる好打者。初球の143キロ直球はボールとなり、大道が2球目に選択したのは「カウントを取りにいった」というスライダーだった。ところが、小椋にとっては「ストレートは捨てて、変化球を待っていました」と待望の球だった。小椋は「ちょっと差し込まれ気味でしたけど」と言いながらも、打球は中堅手の頭上を越え、走者2人が生還した。2点を勝ち越されたが、5番・楠本を直球とスプリットでフルカウントとすると、最後は133キロのスプリットで空振り三振。大道は「ストレートのサインが出ていたんですよ。でも、あそこで首を振れたのが成長」とスプリットを選択して抑え、傷口を広げなかった。

 延長10回、タイブレークで試合に敗れ、チームを勝たせることはできなかった。だが、各打者との勝負は勝ったと言えるだろう。6イニングで被安打2、奪三振は10個。コロナ禍で試合数が少なかったとはいえ、元山が「今年、対戦したピッチャーの中で一番、すごい。いい球を投げていたので、さすがやなと思いました」と言えば、決勝打の小椋は「今までの野球人生の中で一番、いいピッチャー。ストレート、スライダー、スプリットと全部、見たんですけど、すごかったと思います」と話した。

 チームや指名してくれた広島へ感謝の思いを持って投げたという大道はこの試合でアマチュア野球を“卒業”。「楽しかったですが、悔しい気持ちは大きいですよ」。根っからの負けず嫌い。数ヶ月後には次元が異なる世界が待っている。膨らみが大きく、見逃ししかさせられなかったスライダーは今年に入って、変化量を練習。空振りさせることが増え、秋季リーグ戦では36回で60奪三振をマークした。この日はスプリットの精度に「自分でもびっくりした」と好感触。「大学野球は終わりますけど、気を抜かないで、この後も練習をし続けます」。ゴールはない。進化は続いていく。

(高橋昌江 / Masae Takahashi)

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