原監督も驚いた…巨人坂本、18歳の決断 担当者が明かす2000安打バットの変遷

バットへの惜しみない愛情とこだわり「すごくバットを大事にしてくれています」

 坂本選手が使うのは大まかに金本モデル、由伸モデルの2種類ですが、これまでに、いろんなバットを試しています。例えば筒香嘉智選手、山田哲人選手と同じ型のバットを作ってくださいとか。稲葉篤紀選手や日米野球で来日したホセ・レイエス選手のバットを作ったこともありました。実際に使ってみて、合う、合わないを確かめる。合わないと思ったら、スパンと辞める。最終的には今使っているバットの型に戻るんですが、好奇心というか貪欲というか。何でも受け入れてトライする姿勢には頭が下がるばかりです。

 若手の頃は遠征でバットケースに10本入れて持っていったら、帰ってくる時にはバットを半分以上折って帰ってきたこともありました。それが、ここ4、5年ぐらいはほとんど折らなくなりました。年間でも1桁。今、遠征で持っていくのは5、6本が入る小さいバットケースです。これは坂本選手の技術が間違いなく上がっているということだと思います。

 バットにも愛情も感じます。有名な話ですが、入団3年目か4年目でしょうか。結果が出なくて打席で三振してベンチに帰ってきた時に、地面に思い切りバットを叩きつけたんです。それでバットが折れてしまった。そしたら、試合後に私のところに来て、「岩さん、バットを自分で折ってしまいました。工場の職人さんにも謝りたい」と。そういうところまで、気を回してくれるんだ、と感心しました。それ以降、バットを叩きつけようとして止めようとしたのは見たことがありますが、それっきりないですね。あと最近よく目にするのはバットを磨いていることです。すごくバットを大事にしてくれていますよね。キャプテンに就任してからでしょうか。一気に変わっていったような気がします。

 用具担当者はロッカールームに入ることができます。今年は新型コロナウイルスの影響でなかなかその機会もありませんが、坂本選手は先輩に可愛がられ、後輩には慕われるキャラクターです。やっぱり後輩の面倒見はいいし、先輩には場の空気を読んで冗談や茶化すこともある。それは外国人選手に対しても同じです。

 ずっと1軍で試合に出ていると勤続疲労というのもあると思います。私は55歳。坂本選手との年の差は23歳ぐらい違う。ある意味、親子の年齢差で、どこか息子を見る感覚があります。それでも、試合後に「岩さん、このバットで打てました。ありがとうございます」と言いながら渡してもらったジャビット人形は宝物です。次は3000本? 3000本なんかすぐですよ。私はこう信じています。

(小谷真弥 / Masaya Kotani)

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