絶好機でバント失敗、8回に決勝打 鷹・甲斐が土壇場で示した“意地”
「当てて何か事を起こそうと思いました」
■ソフトバンク 4-3 ロッテ(CS・14日・PayPayドーム)
ソフトバンクが4年連続の日本シリーズ進出に王手をかけた。14日に本拠地PayPayドームで行われたロッテとの「パーソル クライマックスシリーズ パ」第1戦。序盤にビハインドを背負う展開となったが、同点に追いつくと、8回に甲斐の適時内野安打で決勝点を奪った。
執念のゴロが転がった。8回、2死満塁のチャンスで打席に立った甲斐。「どうやって打とう、ではなく気持ちでした。ボールをしっかり見て、当てて何か事を起こそうと思いました」。澤村の152キロのスプリットをバットに当てると、ボテボテの遊ゴロに。「打球は見てないです。全力で走りました」。頭から突っ込み、魂のヘッドスライディングで1点をもぎ取った。
汚名を返上する一打でもあった。2点ビハインドの5回だ。先頭の牧原が遊撃二塁打で出塁、松田宣が四球で続き、無死一、二塁のチャンスで打席に立った。だが、甲斐は送りバントに失敗。スリーバントを試みたが、決められずに走者を進められなかった。
「自分のやるべきことができなかった」と思わずを天を仰いだが、そこは難しい捕手というポジション。「試合は続いている。バントを失敗したからといって引きずってキャッチャーにいくと、それが投手には伝わってしまう」。気持ちを切り替えてマスクを被り、そして、再び巡ってきた好機では「なんとかしたい」と決勝打に繋げた。
工藤公康監督もこの“ナニクソ魂”を高く評価する。バント失敗を責めることはなく「意地でも、なんとしてでもというのが大事かなと思います。失敗は誰にでもある。それをどう取り戻すか。悔しい思いをして、それを取り返そうとすることが大事。“自作自演”とは言わないまでも、よく打ったなと思います」と称えた。
仲間の声も甲斐の背中を押した。「(川島)慶三さんの声とか、ずっと聞こえていて、良い仲間、良い先輩方がいる。自分のために声を出してくれる。それがこのチームのいいところ」。仲間のためになんとかしたい。その思いも乗り移った一打だった。
アドバンテージの1勝を含めて2勝0敗とし、4年連続の日本シリーズ進出に王手をかけたソフトバンク。甲斐は「打たれましたけど、粘り強く千賀が投げた結果だと思う。3点は取られましたけど、折れることなく投げたおかげだと思います。気持ちのこもったボールを投げてくれていた」と、先発した千賀を労うことも忘れなかった。