慶大、そしてENEOS… “再建請負人”の大久保監督が語る「いい組織」とは?

選手に求めた「早寝早起き朝ご飯」、建て直しには時間が必要と思ったが…

 2020年のチームスローガンとして掲げたのは「ドラマティックチェンジ」。劇的な変化を生み出すため、まず取りかかったのは基礎を整えることだった。

「いい集団、いい組織にしていくためには、いい人材、いい選手が必要です。いい選手を作るためにはどうしたらいいかといったら、規則正しい生活をキチンとできる選手を増やすこと。規則正しい生活っていうのは、早寝早起き朝ご飯。しっかり朝起きて、ご飯を食べて、練習の準備をして……って、高校生に言うようなことから始めました」

 不在の間に力の差をあけられた東芝、チームの合併を繰り返し競争に勝ち残った選手が集まる三菱パワーとの差を考えると、「僕は全然時間が足りないと思っていたんですよ」と明かす。個々の実力や意識を引き上げていかないといけない。チームとして誰が勝負強くて、誰が役割をちゃんと理解しているのか、監督自身も見極めの時間が必要だった。そんな時、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、チーム活動が休止となる。

「チームとしての活動はできなかったけど、結果として選手が成長するいい時間になったんですよ。外出できないから、やることといったら野球と向き合うしかない。朝起きて、練習して、課題の本を読んで、夜はお風呂に入ったら眠くなって……。勝手に規則正しい生活になって、やることがないから個人練習をしているうちに、自粛が明けたら『あれ、球が速くなってるぞ』『あれ、打球がちょっと良くなってないか?』って。それでチームとして戦い始めたら、少しチームらしくなって『あれ、負けないぞ』となっていったんです」

 社会人野球の選手ともなれば、普段は社業と並行して野球に励む日々。改めて野球と向き合い、野球について考える時間は、普段はなかなか取ることができない。それがコロナ禍により、野球や人生、様々なことに思いを巡らす時間が生まれた。そこに大久保監督が普段から「うるさいくらいに言ったりする(笑)」という「キャッチボールを大事にすること」「1球に対する執着心」というメッセージが、うまくリンクしたのかもしれない。

 9月に入り、都市対抗野球大会の予選が始まると、代表決定リーグ初戦の東芝戦は3-0で完封勝ち。翌日の三菱パワー戦では延長12回までもつれたが5-3で勝利し、西関東第1代表として5年ぶり50回目の本戦出場を決めた。チーム再建を託された就任1年目で、見事なV字回復を見せつけた。

「今年本戦に出られることは、選手にとって転機ですよね。僕が来たことも転機の1つだと思うし、この変化がいい方に出た。22日から都市対抗が始まりますけど、今回は結果がどうなろうといいと思っているんです。当然、優勝は狙いますけど、簡単にできることじゃない。本戦通算100勝(あと1勝)も僕にとっては全く気にすることではなくて、その場に立てることが良かった。今年で野球部を卒業する子もいるので、なんとか東京ドームを経験して引退させられる。それができただけで、僕の中では良かったと思っているんです」

中学生や高校生に見てほしい、社会人野球の全力プレー

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY