「ミスター社会人と思っていない」トヨタ自動車の37歳・佐竹功年を支える原動力は?
現役引退は「いらないと言われた時にやめるのが誠意。自分から辞めることはしない」
ここ数年は、チームの状況に応じて、先発と抑えを兼任している。「若手が出て勝っている時はそれでいい。劣勢になったり、アクシデントの時に僕ら(ベテラン)が出て流れを取り戻してしのぐ。それで勝って次の試合に若手が出れば、チームとして成長できる。でも、負ければそこで終わってしまう。三振とか失敗をして取り返すチャンスがないと、若手は自信を失ったまま、そこで終わってしまう。僕らも若い時は何回も失敗しながら、先輩たちに助けてもらった。今は逆に助ける番です」。
「個人の成績には興味ないんです」と話す佐竹。「ミスター社会人」と言われることについても「光栄なことだし、ありがたいですが、自分ではミスター社会人だとは思っていない。それよりも『トヨタ自動車は名門になったな』と言われる方が嬉しいですね」と、愛社精神たっぷりだ。
そして、ユニホームを脱ぐのは「チームからいらないと言われた時」と決めている。自ら引退するつもりはないのだという。
「野球でトヨタ自動車に就職させてもらったので、いらないと言われた時にやめるのが誠意。自分から辞めることはしない。会社員なので、自分で決められることでもないですし、チームとしてまだ必要としてもらえるなら続ける。でも、チームの決定に逆らうつもりはないですし、そうなっても後悔しないようにと思ってやっています」
日本選手権、都市対抗野球の2大大会を既に制した今、目指しているのはチームを常勝軍団にし、「名門」の仲間入りを果たすことだ。昨年の都市対抗野球では準優勝。2016年以来2度目の優勝を狙う今年は、勝ち進めば2回戦で、昨年決勝で敗れたJFE東日本と再び対戦する。
9月に行われた都市対抗野球の東海地区2次予選では、ジャイプロジェクト戦に先発したが、左もも裏の肉離れで2回途中で降板。だが、すでにブルペン投球を再開しており、本大会に向けてギアを上げている。「足はもう痛みはない。あとは恐怖心に勝てるかどうか。ゆっくりはしてられないが、焦らずに準備したい」と、表情は明るい。
「社会人野球をやっている人たちは都市対抗の決勝の舞台を目指してやっている。去年準優勝したので2年目以上の選手はあの舞台を知っているが、1年目の選手はまだ知らない。僕が初めて決勝に行った時に、こんなに楽しいところなのかと感じた。高校生でいう甲子園みたいなもの。その雰囲気を味わってほしい。そこまで行ったら楽しむだけ。決勝で出せる力を出したいですね」
チーム最年長の36歳。トヨタ自動車の精神的支柱を担う佐竹の野球人生に、まだまだ終わりはない。
(福岡吉央 / Yoshiteru Fukuoka)