楽天3位の藤井、エースの自覚が「全てを変えた」 ENEOS通算100勝の記念投手に
東邦ガスとの初戦に3番手で登板、5回6安打無失点の好投
今秋のドラフト会議で楽天から3位指名された社会人野球・ENEOSの藤井聖投手が23日、第91回都市対抗野球大会2日目の第3試合・東邦ガス戦に3番手で登板し、5回6安打無失点の好救援。チームは6-0で快勝し、5年ぶりに本大会での勝利を手にした。
初めて自チームのユニホームで東京ドームのマウンドに立った藤井。2点リードの5回から3番手で登板し、5回6安打無失点でENEOSの通算100勝の記念すべき勝利投手になった。「都市対抗は素晴らしい舞台。こんなに楽しくて緊張感がある舞台はなかなかない」。試合後も、顔いっぱいに笑顔が広がり続けた。
4点リードして迎えた8回、2死一、三塁のピンチを招いた。1ボールから投じた直球を6番・亀山にうまく合わせられた。フラフラと上がった打球を二塁手・小豆澤が全力で背走し、中堅前にグラブを目いっぱいに伸ばして一回転しながらスーパーキャッチ。先輩野手の超ファインプレーに、藤井も喜びを爆発させ吠えた。興奮したままベンチに戻り、小豆澤に「ありがとうございます」と頭を下げると、「お前が投げているときは絶対に1点もやらない」と返された。試合後、藤井は「頼もしい先輩を持った」と改めて感謝した。
試合の直前に味わった悔しさも、先輩が払しょくしてくれた。西関東予選終了後から本戦の先発に合わせて調整してきたが、大久保監督は初戦の先発に藤井ではなく柏原を指名した。藤井は、大久保監督に「先発するつもりだった。どうして自分は選ばれなかったのか」と理由をたずねた。それでも先輩投手陣に「先発じゃなくてもお前が後ろにいるだけで心強い」と励まされ、「チームが勝つことが一番だ」と切り替えた。
今年、大久保監督から届いた年賀状には「エースとして任せる」と期待を込めた思いがしたためられていた。藤井は「自分なりに自覚を持ってやってきた。私生活を含め普段の練習や細かいところから全て変えた」とメッセージを受け止め、行動で示してきた。成長した藤井の好救援に大久保監督も「(試合の)後半の大事さを本人にも話しましたし、しっかりイニングを投げてくれたのは大きかった」と目を細めた。エースの自覚がチームメートからの信頼を厚くし、いくつもの好守を呼び込んだ。目指すのは大会最多12回目の優勝のみ。この歴史的な白星を突破口に、このまま頂点まで駆け上がる。
(安藤かなみ / Kanami Ando)