沢村賞導いた10完投目の勝利球はまさかの行き先… 中日大野雄、同僚が語る“男気”
「きょう娘の誕生日なんやって? ボールやるわ」
そんな大野雄の姿を遊撃の定位置から見てきた京田は、エースならではの“違い”を語る。「とにかく大野さんは投げているテンポがいいので、守りやすい。これって野手にとっては結構大事なことなんですよね」。ストライク先行で次々とミットに投げ込むことで、野手にもリズムが生まれる。その相乗効果も、10完投を陰ながら支えている。
大野雄がマウンドに上がることで、チーム全体に与える空気感もまた変わってくるという。それは、マウンド上での頼もしさだけでなく、普段から滲み出る人間性も少なからず影響しているのではないか。コロナ禍以前はよくプライベートで食事にも連れて行ってもらっていた京田は、思わぬサプライズプレゼントに懐の深さを感じた。
10月22日のDeNA戦(ナゴヤドーム)。6安打完封で自身5年ぶりの2桁勝利を挙げた大野雄は、ふと京田に話しかけた。
「きょう娘の誕生日なんやって? ボールやるわ」
その場でペンを走らせ「HAPPY BIRTHDAY TO YOU」と記入。2歳を迎えた京田の長女に誕生日プレゼントを贈った。「普段はただ底抜けに明るくて、マウンドでも顔色変えない人なんですが、この人と一緒に頑張ろうとより思わせてくれる人なんですよね」。そう京田は語る。
2018年には未勝利に終わるなど、苦しみを乗り越えた先に掴んだ最高の名誉。グラウンドの内外で同僚たちから抜群の信頼感を得る竜の絶対エースは、来季もチームのために腕を振る。