西部ガスが創部9年目で都市対抗初勝利! 香田監督男泣き…亡き相談役に「恩返し」
鍛え上げた走塁力を大舞台でも発揮「自信、確信を持てた」
第91回都市対抗野球大会3日目が24日、東京ドームで行われ、第3試合で西部ガスが日本製紙石巻との投手戦を制し、3-1で悲願の都市対抗初勝利を飾った。
勝利後、インタビューマイクを向けられた香田誉士史監督は「超うれしいです。ナイスゲーム!」とナインに一言。終始笑顔で喜びを語ったが、9月に急逝した西部ガスの前会長・田中優次相談役の話題になると言葉を詰まらせた。2012年の創部に尽力した相談役に直接白星を届けることはできずとも、「恩返しできました」と話し、あふれる涙をおさえられなかった。
西部ガスのシンボルチームとして創部された2012年以来、相談役は練習試合にもたびたび通った。投手陣に厳しかったという相談役の喪章を左肩に就けて臨んだこの日の初戦。先発の村田が7回1失点、2番手の高椋が2回無失点と盤石のリレーを見せ、香田監督も「(相談役が)ニコニコしながら『やりましたなあ』と言っているような気がします」と満足そうに笑った。
北海道・駒大苫小牧高を率いて夏の甲子園を連覇した経験を持つ香田監督は、創部以来コーチを務め、2017年11月に監督に就任。長い指導経験の中で「短期勝負で一発勝負の世界。その中で好不調がないのは走塁」と信念を持って指導に当たってきた。さらに「走攻守全てでアマチュアの最高技術、プレイヤーがどこのチームにもそろっている。その中でどう隙を突くか。社会人のステージで学んだことも多い」と、最高峰の舞台で勝ち抜くために選手たちにレベルアップを求めた。
磨き上げた走塁は大舞台で輝いた。1点を先制された直後の7回裏、3連打で1点を返しすぐに同点に追いついた。さらに1死一、三塁から、永利の二ゴロの間にスタートを切っていた二塁走者・正木が一気に生還し勝ち越しに成功。続く大久保の内野安打を処理した二塁手の送球が逸れたのを見て、二塁から山中が激走で生還。鍛えあげた走塁で2点を奪い、点差を広げた。香田監督は「ここ一番で(プレーが)出るための練習をやってきました。そこで点を取れば(投手陣が)最少失点で抑えてくれる自信があった」と走攻守全てが噛みあったナインを称えた。
創部9年目でようやくつかんだ全国大会での白星。昨年はJABA九州大会を制するなど、ここまで進めてきた歩みが徐々に結実してきている。香田監督は「確信をなかなか持てないところや不安もあったが、『今日やれた』という自信、確信を持てた」と手応えを口にする。「まずは次の試合に集中して一戦必勝。その先の高みをつねに目指していきたい」。黒獅子旗を福岡の前会長のもとへ持ち帰る。
(安藤かなみ / Kanami Ando)