亡き親友と見た都市対抗… 中日・京田が遺族に伝えた想いと譲り受けたグラブを返す意味
自らも2児の父…わが子を失った中井さんの両親の思いに寄り添う
今度は、京田が亡き友にエールを送る番だった。その場で借り受けた中井さんのユニホームを着て、スタンドからHonda鈴鹿との2回戦を見守った。試合は7-2で勝利。ベンチにも背番号6のユニホームは飾られていた。「すごくチームの雰囲気がいいですね。このまま勝ち上がりそうな気がします。これも、諒の力ですかね」。観客席へ一礼するナインに、立ち上がって拍手を送った。
少し離れた場所で、笑顔を見せる中井さんの両親。わが子はグラウンドにいなくても、チームの勝利を心から喜んでいた。その姿に、京田は堪えるのに必死だった。自身も2児の父。親としての思いに、少しでも寄り添う。
「どんなに時間がたっても、つらい思いは消えないと思うんです。でも、こうして諒のユニホームを着てチームを応援することが、また諒を思うことにつながるんですよね」
今季ともに戦ったグラブは、中井さんのもとへと戻すことにした。「僕は諒の力を借りただけなんで、グラブが元気なうちに返そうかなって」。その代わり、来季用に新調するグラブに、思いを乗せる。長女、長男の名前とともに「諒」の文字を刺繍する。中井さんと同じ久保田スラッガー製で、年内には手元に届く。またすぐ、新たなシーズンがやってくる。
「これからも一緒に戦いますよ」
ドームを出た京田に、秋の日差しが降り注ぐ。2人の遊撃手を繋ぐグラブはきっと、頼もしいに違いない。
(小西亮 / Ryo Konishi)