元阪神・林威助氏の今 中信2軍監督として高く評価される指導力と統率力
前期優勝を果たした中信で伸び悩む中堅選手の復活や若手選手の成長をサポート
台湾プロ野球の現役選手、及び指導者を務める元NPBの台湾人の中で、日本で最も高い人気を集めた選手といえば、現在、中信兄弟で2軍監督を務める林威助氏だろう。
2013年オフに阪神から戦力外通告を受けた林氏は、台湾プロ野球のドラフトを経て2014年から中信兄弟でプレー。怪我に悩まされながらも、高い打撃技術はもちろん、チームリーダー(2015年、16年はキャプテン就任)として、プロ野球選手としての姿勢を若い選手達に伝えた。2017年限りで引退すると、経験の伝承、後進の育成を期待され、2018年から2軍監督を務めている。
台湾最南端に位置する屏東県の中心、屏東駅から10キロほど離れた辺り一面に農地が広がるエリアに、中信兄弟のファーム施設はある。台湾で、林威助監督率いる中信兄弟2軍は「挙頭三尺有威助」という言葉で形容されることがある。これは「挙頭三尺有神明」、意訳すれば「神様は、いつもあなたのそばにいる(だから、決して悪いことをしてはならない)」ということわざにかけた言葉で、2軍は林監督が常に厳しく目を光らせている、ということを表している。
日本でのプレーを希望していた亡き父の希望を叶えようと、高校1年の途中で福岡県の柳川高へ留学、近大を経て、阪神で10年間プレーした林2軍監督は、指導者として、フィジカル面、技術面はもとより、グラウンド内外の規律、マナー、そして態度についても、プロ野球選手として「あるべき姿」を求める。
台湾では「日本式の厳格な指導」と例えられる事が多いが、台湾で選手として4年間プレーした林2軍監督は、その「異文化体験」もふまえた上で、噛み砕いて伝える工夫をしているようだ。
林2軍監督は伸び悩む中堅選手の復活や若手選手の成長をサポートし、前期シーズン優勝、後期も優勝争いをし、台湾シリーズに出場した1軍の選手層の底上げを支えた。育成と同時に、2軍公式戦でも、初年度の2018年は2位、昨年は1位、今年も2位と安定した成績を残し、一昨年、昨年は2軍チャンピオンシップでも優勝した。
屏東の酷暑、野球に打ち込むしかない環境に加え、林2軍監督の厳しい指導もあり、「ファームには戻りたくない」と、1軍残留の大きなモチベーションにしていた選手もいるという。
11月16日に行われた年間表彰式でも、今季復活を果たしてベストナインとゴールデングラブ賞を受賞した許基宏が「一番辛い時に支えてくれた」と謝意を示していた。また、今季、正捕手に返り咲き、ゴールデングラブ賞を受賞した陳家駒も、諦めかけた際、林2軍監督の「ユニフォームを脱いでしまえば楽だよ。もう努力しなくていいんだから」という言葉を思い出し奮起、復活を果たした。
選手たちから「林桑(リンさん)」と呼ばれている林2軍監督。厳しさの中にも「愛情」があるその指導力、統率力は高く評価されており、ファンの中には、近い将来の1軍監督就任を期待する声もあるようだ。
なお、12月27日には、台湾観光協会大阪事務所の協力により、甲子園歴史館で、林氏のオンライントークショーが行われる。幸運にもチケットを入手できたファンは、是非、指導者としての苦労や、やりがいについても質問してもらいたい。
(「パ・リーグ インサイト」駒田英)
(記事提供:パ・リーグ インサイト)