長野久義先輩に憧れ…ホンダ井上、都市対抗V&橋戸賞に感涙「同じ経験が…」
筑陽学園、日大、ホンダと長野と同じチームでプレーした29歳「今年はいい思いを」
第91回都市対抗野球大会の決勝戦が3日、東京ドームで行われ、狭山市代表のホンダが4-1で東京都代表のNTT東日本を下して11年ぶり3度目の優勝を決めた。「3番・左翼」で先発した井上彰吾外野手は5回に試合を決める3ランを放ち、試合後に嬉し涙を流した。大会の最優秀選手に贈られる橋戸賞に輝いた。
「決勝は僕がやってやる」。前日の準決勝で絶好機に凡退した井上は、そう誓って決戦の舞台に立った。同点で迎えた5回1死一、二塁で打席に立つと、相手先発・沼田が投じた初球のチェンジアップを捉えた。大きなアーチを描いた打球が右翼スタンドに飛び込み、井上は一塁を回ったところで大きく跳ねて喜びを爆発させた。
大学1年の時に見た都市対抗で、当時ホンダの中心選手として活躍し優勝に貢献した長野久義外野手(現広島)に憧れ、入社を決意した。以来、同じ筑陽学園から日大、ホンダと歩んだ6学年上の先輩の姿を追い続けてきた。11年の時を経て長野と同じように頂点に立ち、「長野さんがいたから優勝できた、と聞いた。ああいう選手になりたいと思って努力してきた。同じ経験ができてうれしい」と顔をほころばせた。
8年目の29歳。入社してからこれまでを「全然勝てなかった」と苦笑いで振り返る。時には「自分がいるから弱いんじゃないか」と自らを責めたこともあったが、今大会は違った。大阪ガスとの初戦ではいきなり2安打2打点とマルチ安打。続くENEOSとの2回戦ではサヨナラ適時打を放ってお立ち台に立ち、「今年は絶対にいい思いをしてやろうと思います」と高らかに宣言。この言葉が現実となり、決勝でも自らの一振りで勝負を決めた。
5試合で10打点と圧倒的な打棒でチームの11年ぶりVに貢献した井上は、大会で最も活躍した選手に贈られる橋戸賞を受賞した。コロナ禍で公式戦が中止に追い込まれる中、唯一開催された夢舞台での最高の栄誉に「都市対抗ができるか不安だった。開催されて、野球ができる喜びを感じながら野球ができて、優勝もできて嬉しい」と噛みしめ、「これを機に『常勝ホンダ』を作りたい」と新たな夢を口にしていた。
(安藤かなみ / Kanami Ando)