NTT東日本・向山、久慈賞を“親子受賞” 父と目指すプロ入りの夢「来年は絶対に…」

「久慈賞」を獲得したNTT東日本・向山基生【写真:鳥越涼芳】
「久慈賞」を獲得したNTT東日本・向山基生【写真:鳥越涼芳】

都市対抗制覇には届かず「優勝して橋戸賞を取りたかった。複雑な気持ち」

 第91回都市対抗野球大会の決勝戦が3日に東京ドームで行われ、東京都代表のNTT東日本は1-4で狭山市代表のホンダに敗れた。入社2年目の24歳で「1番・中堅」で先発出場した向山基生(むこやま・もとき)外野手は、敢闘賞にあたる「久慈賞」を獲得。向山の父、隆康さんも1992年に東京都・熊谷組の内野手として準優勝して久慈賞に輝いており、親子受賞となった。

「チームが負けて悔しいですし、優勝して(MVPにあたる)橋戸賞を取りたかった。でも、久慈賞も社会人野球をやっていて1度取れるかどうかの賞ですから光栄。複雑な気持ちです」と苦笑いを浮かべた。

 相手先発投手で法大時代の1年後輩にあたる朝山に、8回3安打1失点と抑え込まれ、9回も主将の福島から得点を奪えなかった。一方、準決勝までの4試合をわずか2失点に抑えていた投手陣も、先発の沼田が1-1の同点で迎えた5回に3ランを浴びて力尽きた。向山は6回に左前打を放ち3打数1安打1四球。今大会5試合を通じ15打数5安打、打率.333をマークした。

 向山は右投げ右打ちのスラッガーだが、父の隆康さんは左投げ左打ちの一塁手で、アマチュア球界を代表する名選手だった。94年生まれの向山は、父がプレーする姿をリアルタイムで見たことがないが、現役当時のビデオを折に触れて見返しているという。法政二高を卒業する頃までは、チームの練習とは別に、その父とマンツーマンの特訓にも取り組んでいた。

「どこに行っても『お父さんはいい選手だった』と言われます。僕は久慈賞をいただきましたが、それほど目立った活躍はしていない。近づけたとは思っていません」と首を横に振った。

 都市対抗制覇という現実的な目標ができた向山だが、個人的にはプロ入りという夢もある。法大4年時には、プロ志望届を提出したものの指名漏れ。社会人2年目の今年も指名はなかった。「社会人の野手は年を取るほど(指名の)可能性が低くなる。来年は絶対に行きたい」と焦りを隠せない。

 コロナ禍に翻弄され、最後はタイトルを獲得して締めた年を「人生で1番、バッティングに悩んだ。飯塚監督、コーチにご指導をいただいて、ここにきてようやくしっくりいくようになりました」と振り返る。

「僕がプロに行くためには、バッティングを磨いて即戦力といわれる選手になるしかない。バッティングにこだわっていきたい」と強調する。来年、この大会で優勝した上で、父も縁がなかったプロへ進んでみせる。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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