トライアウトの悲壮感は「周りが思っているだけ」 出場選手にある“共通点”とは?
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プロ人生の分かれ道…トライアウト前夜は「全然寝られなかった」
「明日人生が変わるかもしれない。逆に野球人生が終わるかもしれない。そんな1日が待っていると思うと、全然寝られなかったです。やめるか続けるかの分かれ道にもなるわけですからね」
投手は打者3人と対戦し、打者には4打席ほど与えられる。「マイナス面なんて一切考えない。いかにやってきたことを信じて、自分らしさを出すか。それしか考えてなかったです」。中途半端なプレーだけはやるまいと心に決め、友永氏はあえて声を出して一緒にプレーする選手たちを鼓舞した。「もう技術うんぬんというより、気持ちが支配している場所」と言い切る。
友永氏はその後、民間企業が新たに創設した「ワールドトライアウト」にも参加。「最初のトライアウトで家族にも悔しい思いをさせてしまったなと。どうしても最後にいい姿を見せたかった」。その舞台で2打席連続打点を挙げるなど存在感を示し、気持ちに区切りをつけて現役生活に別れを告げた。
トライアウト経験者のひとりとして、あらためて思うことがある。
「戦力外にならないことが一番。だけど、もし野球をやめる決断をするのなら、出た方がいいのかなと思います。誰にでもできる経験じゃないし、次に繋がるものはあると思う」
友永氏は現役生活の分岐点を目の当たりにし、あらためてセカンドキャリアの重要性を実感。後輩たちの手本になれるよう起業家として第2の人生をスタートさせ、結婚相談所の運営やアパレル事業などに乗り出している。
今年もまた、あの舞台がやってくる。「出場する選手たちには、悔いだけは残してもらいたくないですね」。一縷の望みにかける選手たちが、自らの力を出し切ることだけを祈っている。
(小西亮 / Ryo Konishi)
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