東日本大震災を乗り越えた「野球の底力を…」 楽天が歩んだ歴史を振り返る

がんばろう東北、がんばろう日本

 4月に入るとすぐに楽天の監督・コーチ・選手は4チームに分かれて山元町、名取市、東松島市、女川町を訪問。写真撮影会を開催したり、野球道具をプレゼントするなどして被災者の方々と交流し、支援活動を行った。そして最後は宮城県庁と仙台市役所を表敬訪問し、シーズンでの奮闘を誓った。

 そして迎えた2011シーズン。待ちにまった4月29日の本拠地開幕戦には20,613人のファンがKスタ宮城に詰めかけた。本拠地開催は実に212日ぶりだった。エース・田中将大投手が先発を務めると、見事に1失点完投勝利。楽天の勝利の象徴でもある白いジェット風船が仙台の空に舞った。そして試合後は再び嶋選手がスピーチを行った。

 ここで嶋はスピーチの結びに「この1か月月半でわかったことがあります。それは『誰かのために闘う人は強い』ということです。絶対に見せましょう、東北の底力を」と言葉を残した。チャリティーマッチでのスピーチと同様にとても印象深く、多くの人々の心を動かした。

 メジャーリーグから松井稼頭央内野手(現西武2軍監督)、岩村明憲内野手が加入したこともあってか、4月は勝ち越すなどまずまずのスタートを切った。しかし、5月になると黒星先行の苦しい展開に。交流戦は9位に低迷すると8月は7連敗を喫する。その後7連勝の躍進で一時は3位に躍り出るも、その勢いを保つことができずに5位でシーズンを終えた。

 この年から統一球が導入されたこともあってか、チーム最高打率は聖澤諒外野手の.288、最多本塁打は山崎武司内野手の11本とシーズンを通して苦しんだ。しかし投手陣では、田中がフル回転を見せ19勝5敗、防御率1.27で最優秀防御率、最多勝、最高勝率さらには沢村賞も受賞する活躍を見せた。

 数字だけにフォーカスして見ると、決して納得のいくシーズンではなかった。しかし東北のために必死に戦う選手たちの姿は、東北の人々に笑顔、勇気、そして熱い気持ちを届けたに違いない。そして野球選手の底力、東北の底力を見ることができたはずだ。

広がる支援の輪、現在も続く復興支援

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