長嶋茂雄氏が左手で描いた“のれん” うどん店主となった元巨人右腕が語る感謝の思い

店内には「條辺」と書かれた色紙が飾られている【写真:宮脇広久】
店内には「條辺」と書かれた色紙が飾られている【写真:宮脇広久】

ミスターから送られてきた色紙は、漢字で「條辺」、ひらがなで「じょうべ」の2枚

「僕には想像もできないことでした。実際、のれんの効果はすごかった。メディアが取り上げてくれましたし、監督(ミスター)のサインをひと目見たいがために食べに来てくれるお客さんがたくさんいました」と條辺氏。「うどん作りの師匠の河野充博社長といい、水野さんといい、僕は人に恵まれています」と、いくら感謝してもしきれない。

 ミスターから送られてきた色紙は、漢字で「條辺」、ひらがなで「じょうべ」の2枚。これを染色業者がそれぞれ、茶色地とオレンジ地の2バージョンで染め抜いた。「もともとは茶色地だけのつもりでしたが、業者さんが“巨人のチームカラーだから”とサービスで…オレンジ地はちょっと派手過ぎて、今のところ掲げたことはありませんね」と笑う。

 オープンからずっと茶色地の「條辺」を掲げてきたが、さすがに色落ちしてきたことから、昨年4月14日の11周年を機に、茶色地の「じょうべ」に替えている。

 そもそも、條辺氏が1軍で活躍したきっかけも、ミスターの“ひらめき”だった。プロ2年目の01年4月3日、敵地・神宮球場で行われたヤクルト戦。條辺氏は開幕1軍入りを果たしたものの、4戦目のこの試合を最後に、先発ローテーション投手と入れ替わり2軍落ちすることが決まっていた。試合前の段階で、ナインを前に「明日から2軍に行きます」とあいさつしを済ませていたほどだ。

 しかし、この試合で條辺氏に想定外の出番が回ってきた。先発の工藤公康氏(現ソフトバンク監督)が、1点リードで5回を投げ終えたところで降板。條辺氏は、前年のシーズン最終戦で1軍デビューしていたとはいえ、3回3失点KOを喫しており、こんな緊迫した状況で登板するとは、本人を含め誰も予想していなかった。

「おまえだってよ」。ブルペン担当コーチを務めていた水野氏にとっても、当時の長嶋茂雄監督からの指示は意外だったが、條辺氏は夢中で残りの4イニングを無安打無失点で抑え切った。プロ初セーブを記録し、まさかの1軍残留。これをきっかけに、この年46試合に登板し、現役最高のシーズンを送ったのだった。

時空を超えた巨人リリーバーの縁、高梨雄平投手との邂逅

RECOMMEND